■n次元正多面体の辺と対角線(その14)

 正多角形の対称性から,正多角形の重心は外接円の中心に等しい.これまで長さの平方の合計,長さの合計を扱ってきたが,座標そのものを用いるのではなく,ベクトルを用いることで計算を簡単にすることができた.

  p1+p2+・・・+pv=0

 また,この議論は物理的に解釈することもできて,平方和

  Q=(p1−p1)・(p1−p1)+(p2−p1)・(p2−p1)+・・・+(pv−p1)・(pv−p1)

はp1のまわりの慣性モーメントである.それをシュタイナーの平行軸定理(Steiner's parallel-axis theorem)を使って回転点を重心に移すことができる.

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【1】シュタイナーの平行軸定理

 多面体の頂点ベクトルをp1,・・・,pv,重心ベクトルを

  c=(p1+・・・+pv)/v

任意の点をzとすると

  Σ|pk−z|^2=Σ|pk−c|^2+v|c−z|^2

が成り立つ.

 もっと一般的には,各頂点に重みwkを設けて,

  W=Σwk,Σwkpk=Wc

とおくと

  Σwk|pk−z|^2=Σwk|pk−c|^2+W|c−z|^2

が成り立つ.

 wk=1のときが

  Σ|pk−z|^2=Σ|pk−c|^2+v|c−z|^2

である.

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【2】応用

 この定理は物理学の問題や確率論の問題に応用されている.たとえば,ベクトルpkを位置ベクトルとみれば慣性モーメントの問題となるし,速度ベクトルとみれば運動エネルギーの問題に転化する.全分散を群間分散と群内分散に分解すると考えれば「分散分析」の問題となるのである.

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