■面正則多面体の展開図とシェパードの定理(その13)

 このシリーズでは,面正則多面体を辺に沿って切り開いた展開図のうち,少なくともひとつがタイル貼りできる性質(TP)をもつ多面体を探索してきました.最初は簡単に見つかると思っていましたが,実際は手応え十分,かなりやりがいのある問題になりました.

 その後,新たにJ10,J49,J87,J88,J89,J90もTP性をもつことがわかっています.最終的にいくつあるのか気になるところですが,今回のコラムでは未解決問題を整理してみたいと思います.

===================================

【1】正三角形と正方形からなるジョンソン立体

 正方形がedge to edgeで接合するものをT型,そうでないものをR型と呼ぶことにする.R型擬似一様タイルの基本領域と一致するジョンソン立体はないことは証明済みであり,

  J26,J27,J29,J35,J36,J37,J44

は除外できる.

 また,関節自由度を考えると△-rich(△:□>2:1)であることも必要と思われ,

  J7,J8,J28

は除外できる.

 さらに,展開図で60°未満の角度が形成される頂点

  [3,3,4,6]

  [3,4,4,4]

  [4,6,6]

をもつものとして,[3,4,4,4]を有するJ45も除外した.

 こうして,24種類ある正三角形と正方形からなるジョンソン立体のなかで,必要条件を満たすものはJ1,J10,J14-16,J49-50,J85-90に絞り込まれたが,J85以外はすべてTPをもつことが確かめられているので,J85だけが未解決のまま残ったことになる.

[補] [3,3,3,3,4]も60°未満の角度が形成される頂点であるが,関節自由度が高く,開裂させることで60°未満の角度は解消される.実際,J87-90は[3,3,3,3,4]を有しているがTP性をもつ.

===================================

【2】正三角形と正方形と正六角形からなるジョンソン立体

 この場合もR型(J3,J18,J22)は除外できることが証明されるので,T型擬似一様タイルを考えることにする.T型擬似一様タイルの基本領域は平行2n辺形になる.

 そこで,正方形2個,正三角形4個,正三角形2個+正六角形1個からなる平行四辺形領域を1ユニットとして,正方形a行d列,正三角形b行d列,正三角形+正六角形c行d列,さらに正三角形あるいは正方形からなるe列が加わった,平行2n辺形型基本領域を考える.

 すると

  正三角形数=(4d+2e)b+(2d+4e)c

  正方形数 =(2d+e)a

  正六角形数=dc

となる.

 これを満たす整数解{a,b,c,d,e}が存在するのは,8種類ある正三角形と正方形と正六角形からなるジョンソン立体のなかでJ55,J56,J57だけである.しかし,これらは展開図で60°未満の角度が形成される頂点

  [3,3,4,6]

を有しているため,除外した.

[補]平行2n辺形型基本領域を2等分したイス型領域を考えると,

  正三角形数×2=(4d+2e)b+(2d+4e)c

  正方形数 ×2=(2d+e)a

  正六角形数×2=dc

の計算によりJ54,J65もパスする.しかし,これらも[3,3,4,6]を有しているため,除外できる.

===================================

【3】正三角形と正六角形からなる立体

 正方形と正六角形からなる多面体がTP性をもたないことは明らかであるから,ここでは正三角形と正六角形からなる多面体を考える.これは前節の特別な場合であって,整数解{a,b,c,d,e}が存在するのは六角反柱だけである.切頂四面体は整数解をもたないのである.

 六角反柱はTP性をもつことが確かめられているので,これでいよいよJ85だけが未解決のまま残ったことになる.

===================================