■高次元における平行多面体元素定理(その2)

 3次元では,5種類の平行多面体をペンタドロンという1種類の元素から構成することができた.ところが,4次元以上の平行多面体では

  4次元 → 最小元素数は3種類以上?

  5次元 → 最小元素数は222種類以上?

という煮えきらない結果しか得られない.3次元の場合うまくいきすぎている感があるのだが,その理由はなぜだろうか?

 n次元平行多面体の元素の具体的な構成方法は(その1)に示したが,本稿では発想の転換が必要なことをあらためて強調しておきたい.

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【1】ミンコフスキーの定理とプリミティブ

 一般に,n次元平行多面体の面数は最大2(2^n−1)個,最小2n個となるが,各頂点の次数がnで面数が最大2(2^n−1)面の場合がプリミティブである(ミンコフスキーの定理).

 2次元の平行多面体は2種類(原始的1),3次元の平行多面体は5種類(原始的1)あるが,4次元の平行多面体は3次元の5種類から52種類(原始的3)へと急増する.また,5次元の場合には,103991種類と膨大で,原始的なものだけでも222種類見つかっている.5次元での平行多面体の状況ははるかに多様となって,そのリストアップはいまでも完成していない.急速に複雑さが増していくのである.

 3次元の場合がうまくいったのは,平行多面体が5種類しかかなかったことよりも,プリミティブが1種類に限られていることによっているのである.

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【2】トップダウンとボトムアップ

 3次元のプリミティブは切頂八面体である.3次元では切頂八面体を48分割すること(top down)によって,ペンタドロンを得ることができ,それが5種類ある平行多面体−−立方体,6角柱,菱形12面体,長菱形12面体,切頂8面体−−に共通する元素であることを容易に確認することができた.

 4次元以上でもn次元の立方体とn次元のプリミティブに共通する元素を作ることができれば,それがn次元平行多面体の元素となりうる可能性は大である.ところが4次元以上ではいささか事情が異なってくる.n次元のプリミティブは1種類ではないからである.

 たとえば,4次元の場合,胞数が最大の30であるものが3つ

   P30=10P14+20P8  (原始的)

   P30=4P14+6P12+12P10+2P8+6P6

   P30=18P12+6P8+6P6

ある.したがって,4次元以上の平行多面体の元素数を決定することは(興味深い問題ではあったとしても)容易ではない.座標さえわからないのでは事実上絶望的であるといってもよい.

 しかし,n次元の立方体は1種類であるから,n次元立方体を分割することによって元素を構成する,すなわち,bottom upの方が都合がよい.そこで,発想を転換して,高次元の平行多面体の元素数を決定するのではなく,元素となる多面体を構成することを目標としたほうが何かと都合がよいと考えられるのである.

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【3】本質は何か?

 3次元の正多面体元素定理で本質的な役割を果たしたのはRT(trirectangular tetrahedoron)であったが,平行多面体元素定理の本質はもうひとつの直角三角錐であるquadrirectangular tetrahedoronにある.

 これは立方体の基本単体(48分割体)であるが,一般にn次元立方体の基本単体Δ^nはn次元立方体の2^n・n!分割体で,

  Δ^n={(x1,・・・,xn)|0≦xn≦・・・≦x1≦1}

なる領域として与えられる.

 なお,私自身も誤解していましたが,4次元の正16胞体は平行多面体ではありません.空間充填形ではありますが,そのためには平行移動したものだけでは済まず,回転させた位置のもの−−軸でいえば[1000]軸でなく[1111]軸のもの−−が不可欠です.正8胞体,正24胞体は平行多面体です.

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