単位球に内接する正多面体の対角線の長さの平方和は頂点数の2乗に等しい.
Σdi^2=v^2
また,外心と重心が一致しない場合は
Σdi^2=v^2(1−c^2)
が成り立ちます.
単体は対角線をもたないので,左辺は稜の長さの2乗和になります.(その8)ではm次元単体の稜の全長についての応用を掲げましたが,今回のコラムではそれ以外の応用についても述べてみることにします.
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【1】幾何学的不等式
等式
Σ|pi−pk|^2=vΣ|pk|^2−v^2|c|^2
より,不等式
Σ|pk|^2≧1/vΣ|pi−pk|^2
が成り立ちます.
左辺は起点から頂点までの長さの2乗平均,右辺はすべての辺と対角線の長さの2乗平均で,等号は重心cが起点のとき.
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【2】m次元単体の稜の2乗和についての幾何学的不等式
等式
Σ|pi−pk|^2=vΣ|c−pk|^2
より,m次元単体の稜の2乗和については,不等式
Σ|pi−pk|^2≦(m+1)Σ|pk|^2
が成り立ちます.
右辺は起点から頂点までの長さの2乗平均,左辺はすべての辺と対角線の長さの2乗平均ですが,単体は対角線をもたないので,左辺は稜の長さの2乗和になります.等号は重心cが起点のとき.
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【3】m次元単体の稜の全長について
m次元単体の頂点数はV=m+1,稜数は(m+1,2)=m(m+1)/2=Eで与えられます.
ここでは長さの2乗和でなく,長さの総和について調べてみますが,
(1,1,・・・,1),(d1,d2,・・・,de)
に対して,コーシー・シュワルツの不等式を適用することによって,単位球に内接するm次元単体の稜の全長について
L=Σdi≦V{E(1−c^2)}^1/2
が成り立つことがわかります.
等号はc=0(外心と重心が一致)し,その単体が正則であるときです.
L=V√E
m=2 → L=3√3 (正三角形)
m=3 → L=4√6 (正四面体)
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