■学会見聞録(中国・大連)

 11月3−6日,中国・大連で開催された離散幾何学会に参加.私にとっては数学関係の学会自体初参加であったが,アットホームな学会ですんなり受け入れてもらった感がある.そこで知りあった多くの方々に謝謝.

 11月6日の秋山仁先生の一般向け講演会のお手伝いをしたあとで,通訳の高橋公一郎氏と一緒に内陸部の長春に移動.大雪で空港が閉鎖,高速道路も封鎖され,帰路がままならなくなったが,中国語が話せる同行者がいてくれたおかげで何とか帰国することができた.ところが,帰国後A型インフルエンザに罹患.やっと発熱から回復したところである.

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 大連での私の発表は,本HPのコラム「n次元正多面体の辺と対角線」で紹介したΣdi^2=v^2(単位球に内接する正多面体の対角線の長さの平方和は頂点数の2乗に等しい)についてである.

 公式:Σdi^2=v^2の面白いところは,2次元図形だけでなくすべての次元で通用することである.すなわち,すべての次元において,単位球に内接する正多胞体のすべての辺と対角線の長さの平方和はv^2で与えられることになる.無理数でなく整数! この美とエレガンス!

 ところが,仙台から大連に出立する直前,秋山仁先生より「その結果は既知だったようです」というファックスが届いて絶句.何とも間が悪い・・・.

 ある程度予期してはいたのだが,何度も再発見されている定理であったのだ.翌日の発表の際は,素直にこの定理が新しいものではないことを謝罪したが,私にいわせれば新しいがどうかが問題ではなく,この美しい定理を数学者がだれひとりとして知らないことが問題なのである!

 実際,参加者でこの定理を知るものは誰もいなかったし,あとで秋山先生にうかがったところ,憶えやすい形でデモできたことで評判も上々だったそうだ.

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 私が関わったもう1題は本HPのコラム「面正則多面体の展開図とシェパードの定理」で紹介したもの.面正則多面体を辺に沿って切り開いた展開図のうち,少なくともひとつがタイル貼りできる性質(TP)をもつ多面体を探索してきて,まだ,証明は完全ではないのであるが,これでTP多面体はすべてであると予想されるリストを発表した.

 これも好評であったということである.これについてはまだHPで紹介していない多くの結果があり,改めて紹介する機会を設けたいと考えている.

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 秋山先生の講演は学会参加者のexcursionの時間に行われた.一方通行の講演を避けるため,中国語の通訳付きであったが,そのため予定外の時間がかかってしまった.しかし,聴衆のだれもが英語を理解できているわけではないので理解を助けるためには必要な配慮であろう.聴衆のルーローの三角形についての関心は非常に高かったし,盛況であったと思う.

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