■シェパードの未解決問題

 面正則多面体を辺に沿って切り開いた展開図のうち,少なくともひとつがタイル貼りできるものをすべて決定せよというのが「シェパード問題」です.この問題は手軽で面白く,小学生でもその気になれば取り組むことができます.

 現在,この問題は完全ではないにせよ,ほとんど完成間近なところにきています.それについては近々紹介しますが,先日「シェパードの第2問題」が送られてきました.

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【1】シェパードの第2問題

 シェパード先生は「円に内接する多角形の重心は,その内部に重心をもつ」ことを証明しました.私はその証明を見ていませんが,コラム「n次元正多面体の辺と対角線(その6)」に掲げた

  SS=v^2(1−c^2)

を使うと証明が与えられるのではと思っています.

 また,多角形の外周が接着して凸多面体が閉じるための条件は「アレクサンドロフの定理」としてまとめられています.アレクサンドロフの定理はさまざまな形で拡張されてきましたが,この多角形はほとんどの場合,非凸です.

 そこで,シェパード先生は,すべての凸多角形は外周が接着して閉じた(凸,非凸)多面体を構成することができると予想しています.私はそれを証明できませんが,あなたは?

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【2】雑感

 非常に単純だが,深淵な数学的発見が今日なお可能である一つの例として,正多角形でない多角形による平面充填形があげられる.ただし,非凸な多角形による平面のタイル張り問題は難しいので,ここでは正多角形ではない不規則な凸多角形に限ってみる.三角形と四角形の場合は凸でなくてもよいのであるが,どんな形の三角形,四角形でも平面を過不足なく敷きつめることができる.凸六角形では本質的に異なる3つのタイプの六角形だけが平面を埋めつくす.また,凸な多角形では七角以上になるとどんな型のものもうまくいかない.

 五角形は特に興味津々である.正五角形はどうしても隙間があいてしまうが,凸五角形ではホームベース形も含めて,現在,14種の平面充填形が知られている.六角形に関しては3種類以外のものは存在しないことが示されているが,五角形に関しては14種ですべてかどうかはまだ証明されていない.このような問題はとかくとり漏らしやすいもので,見逃されているものがあるやもしれない・・・.

 五角形のタイル貼りについては数学者のラインハルトや物理学者のケルシュナーが研究していたのだが,1975年にはほとんど数学を学んだことのない主婦ライスが「サイエンティフィック・アメリカン」誌の記事に触発されて,五角形で平面を敷き詰めるパターンでそれまで知られていないものを3種類も発見したほどである.

 彼女は5人の子供の母親で,台所仕事をしながら数学の教授達があり得ないといった新しい五角形タイルを発見した.また,彼女は高校より上の教育は受けていなかった.新たに何か学んで新しい発見をするのに何歳になっても遅すぎることはないという教訓である.まだ新しいタイプが発見される可能性が残されている.興味と熱意と根気のある読者は是非挑戦されたい.

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