凸空間充填図形としてf=4からf=38までが発見されていて,f≧39が存在するかどうかは未解決である.さらに,空間充填立体でかつその展開図が平面充填図形となっているものがダブル充填図形である.
ダブル充填図形の意義は紙を無駄なく使って,効率よく運搬できるという点にある.工藤の三角錐や鼈臑(べつどう)はダブル充填図形であり,どちらも三角錐(f=4)である.
f=4:工藤の三角錐(展開図の辺数はv=3,4)
f=4:鼈臑(展開図の辺数はv=6)
[参]秋山仁「知性の織りなす数学美」中公新書
にはこれら以外にもダブル充填可能な凸f面体が掲載されている.現在までf=4,5,6,7,8,9,12に対してダブル充填可能立体が明らかにされているとのことであるが,以下ではダブル充填可能な凸f面体を掲げることにしたい.
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【1】立体の面数からの分類
f=4はすでに掲げてあるので,f≧5を掲げる.
[1]f=5(陽馬)
立方体を3つの合同な5面体(斜四角錐)に切り分けた1/3立方体である.陽馬は底面積と高さの等しい錐体の体積は柱体の体積の1/3であることを示すのに数学教育上重要な立体である.陽馬の2分割体が鼈臑である.
「九章算術」の立方体,塹堵(ぜんと),陽馬,鼈臑はピースを並べ替えて等積変形により立体の体積を求積するもので,同じく中国生まれの「タングラム」の立体版と考えられる.
[2]f=6(立方体)
立方体が空間充填図形であることは明らかである.立方体の展開図は11種類あり,意外なことにそのすべてが平面充填図形となる.
[3]f=7(1/8切頂八面体)
立方体を断面が正六角形になるように2つの合同な立体に切り分けてできる7面体もダブル充填図形となる.この7面体は切頂八面体の8等分体でもある.
[4]f=5,6,8(正三角柱,正四角柱,正六角柱)
正三角柱,正四角柱,正六角柱を辺に沿って切るのではなく,それぞれ正三角形,正方形,正六角形の天地面を重心で3等分,4等分,6等分して得られる展開図は平面充填可能になる.
[5]f=9,12
立方体の一面あるいは対向する二面に四角錐を載せたものである.この四角錐の側面はすべて合同な直角二等辺三角形である.
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【2】展開図の辺数からの分類
展開図を凸平面図形に制限すれば,平面充填図形はv=3からv=6までの4種類に限られる.
[1]v=3:工藤の三角錐(二等辺三角形)
[2]v=4:工藤の三角錐(平行四辺形)
[3]v=5:中村の三角錐(平行六辺形を2等分した五角形)
[4]v=6:鼈臑(平行六辺形),パウル・シャッツ立体(平行六辺形)
があげられる.
工藤の三角錐は辺の長さの比が2:√3:√3の二等辺三角形4枚よりなる空間充填三角錐,鼈臑は立方体を6分割した三角錐,パウル・シャッツ立体は鼈臑を√3倍細長くした三角錐です.パウル・シャッツ立体を6個組み合わせたパウル・シャッツ環は連続回転可能な多面体の輪になっている.
v=5以外は容易に理解できる.
[参]中村義作「数理パズル」中公新書427
には展開図が平面充填五角形になる四面体が紹介されている.この五角形を2個組み合わせると3組の対辺がすべて平行な六角形になるのだが,平行六辺形を敷き詰めたものを基本にして2個,3個,4個の五角形に分割した平面充填形が知られている.カイロのタイル貼りは平行6辺形の4分割の例である.
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【3】未解決問題
【1】は体系的というよりは場当たり的に探索されたものと思われる.ダブル充填図形をすべて決定することはかなりの難問であるが,f=10,f=11,f≧13は本当に存在しないのだろうかという疑問が残る.
[参]秋山仁「知性の織りなす数学美」中公新書
には工藤の三角錐以外にもダブル充填可能な凸n面体が掲載されている.現在までn=4,5,6,7,8,9,12に対してダブル充填可能立体が明らかにされているものの,それらをすべて決定することはかなりの難問であるとのことである.n=10,11は本当に存在しないのだろうか?
さらに,ダブル充填図形にはどのような特徴があるのだろうか?
[1]五角形面をもつダブル充填凸f面体は存在するか
ダブル充填図形の展開図の面の形は三角形が多いが,五角形面はないのか
[2]ダブル充填図形はすべて二等分できるか・・・等々.
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