すべての次元で単位球に内接する正多胞体(頂点数v)のすべての辺と対角線の長さの平方和はv^2で与えられるのであるが,それをいわば「ピタゴラスの定理」に相当するものであって,「余弦定理」に相当する公式も存在するはずである.
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[Q]v個の頂点(P1,・・・,Pv)をもつ正多面体が半径1の球に内接しているとき,Q=Σ(2,v)|P1Pj|^2=Σ(1,v)|P1Pj|^2の値を求めよ.
[A]内積をつかえば
Q=(P1−P1)・(P1−P1)+(P2−P1)・(P2−P1)+・・・+(Pv−P1)・(Pv−P1)
ベクトル解析では原点はどこでも好きなところに選ぶことができるから,(P1を原点とするのではなく)球の中心に原点をおくと,
(Pj−P1)・(Pj−P1)=P1・P1−2P1・Pj+Pj・Pj
Pj・Pj=1
より
(Pj−P1)・(Pj−P1)=P1・P1−2P1・Pj+Pj・Pj=2−2P1・Pj
よって
Q=2v−2P1・(P1+P2+・・・+Pv)
が得られる.
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[1]ピタゴラスの定理に相当
正多面体の重心は原点にあるから,その対称性より,
P1+P2+・・・+Pv=0,Q=2v
すべての辺と対角線の長さの平方和SSは,すべての頂点において同じ線分が2回ずつ数えられていることから
SS=v/2×Q=v^2 (QED)
外接球を有しΣPj=0を満たす正多面体以外の多面体でも,この議論は成立する.また,この議論は3次元のみならず,一般の次元についても成立するものであるから,すべての次元で単位球に内接する正多面体(頂点数v)のすべての辺と対角線の長さの平方和はv^2で与えられることになる.
ジョンソン立体ではJ27,J34,J37,J72-75,J80は外接球を有しΣPj=0を満たす(J73,J80は中心対称).
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[2]余弦定理に相当
ここで取り上げるのはP1+P2+・・・+Pv≠0の場合である.
P1+P2+・・・+Pv=r
とおくと
Q1=2v−2P1・r
Q2=2v−2P2・r
・・・・・・・・・・
Qv=2v−2Pv・r
ΣQ=2v^2−2(P1+P2+・・・+Pv)・r=2v^2−2r^2
SS=ΣQ/2=v^2−r^2
すなわち,P1+P2+・・・+Pv=rとすると
SS=v^2−r^2
また,外心・重心間距離をcとすると
c=|r|/v
であるから,
SS=v^2(1−c^2)
で与えられるのである.
ジョンソン立体ではJ1-6,J11,J19,J62-63,J76-79,J81-83は外接球を有しΣPj≠0を満たす.
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