(その26)の結果について,一松信先生よりお手紙を頂いたので,紹介したい.結論自体は小生のものと同じであるが,もっと精密に論じているからである.
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RP(立方体の端欠)と超立方体の基本単体とはよく似ていますが,3次元以上では本質的に別の立体です.4次元の場合は特に二胞角が直角の有理数倍ですが,胞(3次元多面体)の二面角は必ずしも有理比ではなく,両者は分解合同ではないようです.したがって,基本単体あるいはその切半体からRPを組み立てることが可能かどうか,疑問に感じます.
とりあえず私(一松)の計算した図形の形を記しておきます.
n=2のとき,両者とも直角二等辺三角形だが,これは例外的.
n=3のとき,ともに四面体だが,次のように構造が違う.
[1]RT
面:直角三角形(3),正三角形(1)
二面角:直角(3),θ=arccos1/√3(3)
辺長:1(3),√2(3)
[2]基本単体
面:直角二等辺三角形(3),辺の比1:√2:√3の三角形(2)
二面角:直角(3),45°(2),60°(1)
辺長:1(3),√2(2),√3(1)
[注]基本単体を組み合わせてみてもRTはできない(正四面体と正八面体の違い).正四面体に二面角α3=arccos1/3に対して,2θ+α3=180°だが,θ,α3は直角と有理比でなく,互いに有理比でもない.
n=4のとき
[1]RP
胞:3次元のRT(4),正四面体(1)
二胞角:直角(6),60°(4)
面:直角二等辺三角形(6),正三角形(4)
辺長:1(6),√2(4)
[2]基本単体
胞:3次元の基本単体(2),四面体甲(2),四面体乙(1)
二胞角:直角(6),60°(2),45°(2)
面:直角二等辺三角形,直角辺1(3),直角二等辺三角形,直角辺√2(1),辺の比1:√2:√3の三角形(4),辺の比1:√3:√2(正三角形の半分,2)
なお,基本単体の切半超平面に対して,この胞のうち,二胞角90°(3),60°(2)になる.したがって,切片体もその90°,60°,45°と,直角に対して有理数である.しかし,4次元の場合には二胞角だけでなく,胞をなす3次元多面体に二面角を考える必要がある.RPについては,上述のとおり,その二面角は90°,α3=arccos1/3,θ=arccos1/√3である.
他方,基本単体については次の通りである.単体甲はP0P1P2P4あるいはP0P2P3P4の作る単体である.面は4面すべてが相異なり,小さい直角二等辺三角(辺長1,1,√2),大きい直角二等辺三角(辺長√2,√2,2),辺長比1:√2:√3の三角形,辺長比1:√3:√2の三角形,各1面ずつ.辺6本は長さ1(2),√2(2),√3(1),2(1).
この図形を3次元uvw空間に実現すると,4頂点は(0,0,0),(1,0,0),(0,1,0),(0,1,√2)ととることができる.このとき,4面はw=0,u+v=1,u=0,w=√2vに表される.それぞれの法線は(0,0,1),(1,−1,0),(1,0,0),(0,1,√2)であり,それらの内積として二面角を計算すると,次のようになる.
90°,90°,arccos√2/3(=90°−θ),45°,arccos1/√6,90°
単体乙はP0P1P3P4のなす四面体で,辺6本は長さ1(2),√3(2),2(2).面は辺長比1:√2:√3の面(2),辺長比1:√3:√2の面(2)が入れ違いの形であり,中央の切半面は回映面になる.
この辺長を実現する3次元uvw空間内の単体は,4頂点を(−1,0,0),(1,0,0),(−1/2,−1/2,1/√2),(1/2,1/2,1/√2)ととることができる.4面の方程式はu−v+√2w=1,−u+v+√2w=1,√2v−w=0,√2v+w=0と表される.法線ベクトルは(1,−1,√2),(−1,1,√2),(0,√2,1),(0,√2,−1).その間の内積から二面角は
90°,90°,arccos√2/3,arccos√2/3,90°,arccos1/3=α3
となる.
これらの二面角を比較すると(正確にはデーン不変量を計算する必要があるが)基本単体側にRPにないarccos1/√6といった量がはいるので,分解合同ではなさそうである.さらに基本単体またはその切半体を集めてもRPを組み立てることは無理と思われる.
もちろん,もっと精密に論ずる必要があるが,超立方体の基本単体を4次元の素片とするのは無理らしい.
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