■直角三角形の分割(その3)

 どんな三角形も4,9,16,・・・,n^2個に合同分割できることは当然だが,それ以外ではどうだろう.直角をはさむ辺の長さが1:nの直角三角形は,特別にn^2+1個 にも合同分割できるわけである.

  1,4,9,16,・・・

  2,5,10,17,・・・

(1)辺の長さが1:1:√2の直角三角形(45°,45°,90°の三角形,三角定規のひとつ)は同形4つだけでなく,2つの同形にも分割できる特殊な三角形(レプ2三角形)である.

(2)辺の長さが1:√3:2の直角三角形(30°,60°,90°の三角形,三角定規のひとつ)は同形4つだけでなく,3つの同形にも分割できる特殊な三角形(レプ3三角形)である.

(3)辺の長さが1:2:√5の直角三角形は同形4つだけでなく,5つにも分割できる特殊な三角形(レプ5三角形)である.

 これらはすべて(その2)で述べた平方根の螺旋に出現する直角三角形である.平方根の螺旋に出現する直角三角形は自分自身と相似なn個の三角形に分割できるだろうか?

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【1】相似分割と合同分割

 この問題は秋山仁先生が出題された問題であるが,1:√(n−1):√nの直角三角形が自分自身と相似な整数個の三角形に分割できるための条件を求めよという問題と等価である.

 新たに生じる三角形同士は合同である必要はないとして,n個の自分自身と相似な三角形に分割する問題は,n=4またはn≧6ならば可能であることが知られている.

 たとえば,辺の中点を連結すればどんな三角形も4個の小三角形に合同分割できる.次に小三角形を4個に合同分割すれば1,4,7,・・・個の相似分割となる.二辺の3等分点を連結し台形を5等分すれば,6個の相似分割となるから,次に小三角形を4個に合同分割すれば6,9,12,・・・個の相似分割となる.二辺の4等分点を連結し台形を7等分すれば,8個の相似分割となるから,次に小三角形を4個に合同分割すれば8,11,14,17,・・・個の相似分割となる.

 n=2,n=3の場合は直角三角形のみがそのように分割可能である.n=5,すなわち,5つの相似三角形に分割できる三角形は何かという問題では直角三角形は自分自身と相似な5個の三角形に分割できるが,それ以外に内角30°,30°,120°の二等辺三角形が可能である.5つの相似三角形に分割できる三角形はこの2種類のみであることが証明されている.

 新たに生じる三角形同士は合同であるとして,6,7,8,・・・個の合同分割が可能な三角形はおそらく存在しないと思われるのである.

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【2】雑感

 秋山仁先生は「ゆとり教育」を提案したひとりとして知られていますが,ゆとり教育に問題があるとの指摘は多く聞かれます.秋山先生の提案は「πの値は憶えられるだけ,つまり人によっては3でもいいし,3.14でも3.14159でもいい」すなわち,人それぞれに自分のできる範囲で余裕を持って考える.そして,本質を見抜く眼をもち,与えられた情報を鵜呑みにせず,自分で考えることができる若者を育成する・・・それがゆとり教育の定義のはずでした.

 ところがいつのまにかゆとり教育の定義がすり変わり,分数のできない大学生が大量発生し,π=3を国家規格にという意見まで飛び出す始末でありました.πを画一的に3にしてしまってはいけないのですが,大学受験になると途端に記憶第一,成績第一になってしまうことに問題の本質があるのでしょう.その見直しが必須なのですが,・・・

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