多面体Pに対し各辺のまわりの二面角をδiとすると,デーン不変量δ(P)はすべての辺で二面角の和をとり,mod πで還元したものとして定義される.
δ(P)=Σniδi (mod π)
5種類ある平行多面体の元素数は1であることが成り立ったのは,平行多面体が空間充填多面体であって,その二面角がπと通約できることに基づいている.すなわち,平行多面体のデーン不変量はすべて等しい(0である)からである.
[1]8次元立方体と8次元正四面体の両者を共通の片から構成する
[2]8次元立方体と8次元正八面体の両者を共通の片から構成する
[3]8次元正四面体と8次元正八面体の両者を共通の片から構成する
というのは,両者のデーン不変量が異なるから無理である.したがって,元素数が2であると仮定すると矛盾を生じるので,元素数は3となる.
8次元でなく,3次元の場合であっても
[4]3次元正四面体と3次元正八面体の両者を共通の片から構成する
ことは,両者のデーン不変量が異なるから無理である.
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【1】3次元正多面体の元素数
3次元のデーン不変量の結果を振り返ってみよう.3次元では5種類ある正多面体の元素数は4であることが証明された.どうしてもそれだけの元素が要るという必要条件は
n1δ4+n2δ6+n3δ8+n4δ12+n5δ20≠0 (mod π)
であるが,δ8=π−δ4より,
(n1−n3)δ4+n2δ6+n4δ12+n5δ20≠0 (mod π)
実際,
2立方体←→2正四面体+正八面体
に解体再編されるから,δ8を消去できる.
δ6=π/2であるからさらにδ6も外すことができて
N1δ4+N2δ12+N3δ20≠0 (mod π)
とより簡潔に書くことができる.これは,デーンの定理(1901年)
N1δ4≠0 (mod π)
の一般化に他ならない.
3次元の場合を直観的に理解するため,ラベルしてまとめると
二面角
4面体 A
6面体 B
8面体 A
12面体 C
20面体 D
の4群ということになる(元素数4以上).
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【2】4次元正多面体の元素数
二胞角
5胞体 δ1=arccos(1/4)
8胞体 δ2=π/2
16胞体 δ3=2π/3
24胞体 δ4=2π/3
120胞体 δ5=4π/5
600胞体 δ6=arccos(−(1+3√5)/8)
8胞体,16胞体,24胞体はいずれも空間充填多面体であって,そのデーン不変量はすべて等しい(0である).実際,
8×8胞体←→12×16胞体←→24胞体
の解体再編が成り立つ.
しかし,120胞体は二面角が直角と有理比ではあっても2πの整数分の1ではないので,空間充填多面体ではない.すなわち,8胞体,16胞体,24胞体のデーン不変量とは異なる.
また,δ1+δ6=4π/3(→δ1+δ3+δ6=2π)であるが,
n1δ1+n2δ2+n3δ3+n4δ4+n5δ5+n6δ6≠0 (mod π)
にδ6=4π/3−δ1を代入して,δ6を消去し
N1δ1+N2δ2+N3δ3+N4δ4+N5δ5≠0 (mod π)
とするのは錯覚である.δ1+δ6=4π/3も直角と有理比ではあっても,2πの整数分の1ではなく,8胞体に解体再編されないというのがその理由である.
したがって,8胞体に解体再編されるかどうかでもってラベルすると
二胞角
5胞体 A
8胞体 B
16胞体 B
24胞体 B
120胞体 C
600胞体 D
の4群ということになる(元素数4以上).
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【3】n(≧5)次元正多面体の元素数
二胞角
正単体 δ1=arccos(1/n)
超立方体 δ2=π/2
正軸体 δ3=arccos(−(n−2)/n)
超立方体の二胞角はつねにπ/2で,何次元であっても空間充填形になる.正単体の二胞角はn=2以外には2πの整数分の1にならないので,n≧5では正単体による充填形はできない.正軸体の二胞角はn=2,n=4以外には2πの整数分の1にならないので,同じことがいえる.
したがって,
二胞角
正単体 A
超立方体 B
正軸体 C
の3群ということになる(元素数3以上).
少し気にかかるのは8次元の場合である.n≧5のとき,8次元の場合だけ
δ1+2δ3=2π
なる関係が成立するが,このときも直角と有理比ではあっても,2πの整数分の1ではなく,超立方体に解体再編されない.実際,
17280×正単体+2160×正軸体→超立方体ではない亜正多面体
である.よって,n(≧5)次元正多面体の元素数は3であることが確定する.
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【4】デーン不変量についての小括
デーン不変量は分割合同の分割線が辺の上にあるときはいいのであるが,3次元の正4面体と正8面体の組み合わせでは
δ4+δ8=π(これは空間充填形で,2πの整数分の1)
で分割線が面の上にあり立方体に解体再編されるため,どちらか一方を消去することができる.
4次元のδ1+δ6=4π/3>π
→δ1+δ3+δ6=2π>π(これは空間充填形ではない),
8次元のδ1+2δ3=2π>π(これは空間充填形ではあるが)
の場合,2πの整数分の1にならず分割線が内部にあることになり,超立方体に解体再編されない.そのため,消去できず独立と考えられるのである.
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【5】結論
このシリーズではこれまで直角三角錐(RT,RP,・・・)がn次元の正多面体の元素定理の本質をなしていることをつきとめた.3次元正多面体の元素定理でカギを握っているのが直角三角錐(RT:right tetra)であることに気づけば,任意のn次元でも直角三角錐が有用になると考えるのは自然な発想,自然な成り行きであろう.
n次元の直角三角錐2^n個で正2^n胞体ができる.また,この図形n!個の体積は1辺の長さ2の正2n胞体(体積:2^n)と等しくなる.正2n胞体からはこの図形を2^n-1個を取り除くことができる.
[1]元素数の減少が起こる理由
3次元では立方体から直角三角錐を4個取り除くと正四面体,4次元では正8胞体からRPを8個取り除くと16胞体になるため,元素数がひとつ減る.さらに,4次元の特殊性として192個のRPから正24胞体が構成されるため,もうひとつ元素数は減るのである.
[2]元素数の減少が起こらない理由
5次元以上の空間では直角三角錘をn-1個を取り除くと正多面体にならず,1種の準正多面体になる.また,2次元では正方形から直角三角形を2個取り除くと何も残らない.これが各次元における元素定理の正体なのである.
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