■デーン不変量と二面角の幾何学(その33)

 正2n胞体の二面角はつねに90°であるが,正n+1胞体の二面角は

  cosδ1=1/n,sinδ1=√(n^2−1)/n

正2^n胞体の二面角は

  cosδ2=−(n−2)/n,sinδ2=(2√(n−1))/n

であり,二面角はnとともに増加しそれぞ90°,180°に近づく.

 今回のコラムでは2δ1+2δ2=360°となるのは3次元の場合に限られること,2δ2=360°となるのは4次元の場合に限られることを証明しておこう.

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【1】3次元の特殊性

  cos(δ1+δ2)=cosδ1cosδ2−sinδ1sinδ2=−(n−2)/n^2−2(n−1)√(n+1)/n^2=−1

  n^2−n+2=2(n−1)√(n+1)

  n^2(n−3)^2=0

 すなわち,3次元において2δ1+2δ2=360°となるが,2種の二胞角で,その和が360°になり,空間充填形を構成できるのは,3次元の場合だけである.

  arccos(1/3)+arccos(−1/3)=

 =arccos(1/3)+π−arccos(1/3)=π

となって,解析的にも確かめられた.

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【2】4次元の特殊性

  cosδ2=−(n−2)/n=−1/2

よりn=4.すなわち,4次元正16細胞体の二胞角はちょうど120°となる.

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【3】まとめ

 超立方体は各次元で空間充填形であるが,以上のことから,複数の種類による空間充填形として2種の胞間の角の和が360°になるのは,n≧3のとき,

[1]2α3+2β3=360°

[2]3β4=360°

[3]α8+2β8=360°

の場合だけである.これは空間充填の必要条件だが十分条件も満たす,すなわち,実際の空間充填形を構成することができる.

 正多面体で空間充填形になるのは,各次元で可能な超立方体を除けば,3,4,8次元のものに尽きるのである.なお,24次元にはリーチ格子という密な格子があるが,その構成要素は正多面体ではない(亜正多面体とでもいうべきか?).

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