■デーン不変量と二面角の幾何学(その32)

 3次元では正四面体と正八面体の二面角が直角と有理比の補角(180°)になる.4次元では正16胞体,正24胞体の二面角が120°,正5胞体と正600胞体の二面角が直角と有理比の補角(240°)になる.

 それでは,5次元以上の正多胞体ではどうだろうか? 8次元正多胞体で

  8次元正単体の二胞角+2×8次元正軸体の二胞角=360°

になる.今回のコラムでは,複数の種類による空間充填例はこれ以外にないことを証明してみたい.

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【1】5次元以上の正多胞体

 正2n胞体の二面角はつねに90°であるが,5次元以上の空間では正n+1胞体の二面角は

  cosδ1=1/n,sinδ1=√(n^2−1)/n

正2^n胞体の二面角は

  cosδ2=−(n−2)/n,sinδ2=(2√(n−1))/n

であり,二面角はnとともに増加しそれぞ90°,180°に近づく.

n       δ1     δ2     δ1+δ2

2 60.0001 90.0001 150

3 70.5288 109.471 180

4 75.5226 120 195.523

5 78.4631 126.87 205.333

6 80.406 131.81 212.216

7 81.7868 135.585 217.372

8 82.8193 138.59 221.41

9 83.6207 141.058 224.678

10 84.2609 143.13 227.391

11 84.7842 144.903 229.687

12 85.2199 146.443 231.663

13 85.5883 147.796 233.384

14 85.904 148.997 234.901

15 86.1775 150.074 236.251

16 86.4168 151.045 237.462

17 86.6278 151.927 238.555

18 86.8153 152.734 239.549

19 86.9831 153.475 240.458

20 87.1341 154.158 241.292

 二面角が4直角の整数分の1にならないのは,4次元において二面角がそれぞれ72°と120°よりも大きくなるからである.また,このことから5次元以上の空間では3種の正多胞体しかありえないことになる.

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【2】8次元の特殊性

 さらに,このことから5次元以上の空間で,正n+1胞体と正2^n胞体の二面角が2直角にはなるのは,

  δ1+2δ2=360°

の場合に限られることもわかるだろう.

  cos2δ2=(n^2−8n+8)/n^2

  sin2δ2=−4(n−2)√(n−1)/n^2

  cos(δ1+2δ2)=cosδ1cos2δ2−sinδ1sin2δ2==(n^2−8n+8+4(n−1)(n−2)√(n+1))/n^3=1

  n^3−n^2+8n−8=4(n−1)(n−2)√(n+1)

  n^2+8=4(n−2)√(n+1)

  n^2(n−8)^2=0

 すなわち,8次元においてδ1+2δ2=360°となるが,2種の二胞角で,その和が360°になり,空間充填形を構成できるのは,n≧5のときは8次元の場合だけである.

n       δ1     δ2     δ1+2δ2

2 60.0001 90.0001 240

3 70.5288 109.471 289.471

4 75.5226 120 315.522

5 78.4631 126.87 332.203

6 80.406 131.81 344.027

7 81.7868 135.585 352.956

8 82.8193 138.59 360

  arccos(1/8)+2arccos(−6/8)

 =arccos(1/8)+2π−arccos(1/8)=2π

となって,解析的にも確かめられた.

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