最近,本コラムでは専ら初等幾何の問題を取り扱っている.その発端は,中川宏さんが
[参]吉田克明+中野潤「直感で分かるおもしろ図形・幾何」技術評論社
(Q)三角形の辺を2倍に延ばすと(三角形の面積は)どうなる?
の記事を読んで,初等幾何にはまってしまったことによる.
(A)もとの三角形の面積の7倍になる.
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【1】発見的研究法の例
一般に与えられた三角形の各辺を同じ倍率kで伸縮した位置に点をとって作った三角形の面積は,もとの三角形の面積の
M=3k^2−3k+1=3(k−1/2)^2+1/4
倍になる.
k=1/3 → M=1/3 (3等分)
k=1/2 → M=1/4 (4等分)
k=2/3 → M=1/3 (3等分)
k=1 → M=1
k=2 → M=7 (7等分)
となる.
0<k<1のときはもとの三角形より小さくなり,k=1/2のとき最小値1/4をとる.k>1のときはもとの三角形より大きくなり,k=2のときには7倍になる.
同じく,四角形の各辺を同じ倍率kで伸縮した位置に点をとって作った四角形の面積は,もとの四角形の面積の
M=2k^2−2k+1=2(k−1/2)^2+1/2
倍になる.0<k<1のときはもとの四角形より小さくなり,k=1/2のとき最小値1/4をとる.k>1のときはもとの四角形より大きくなり,k=3/2のときには5/2倍になる.
各辺を同じ倍率kで伸縮した位置に点をとって作った三角形の面積は,もとの図形の三角形小部分の面積のk(k−1)倍になるが,もとの三角形は3重に,もとの四角形は2重に数えられているので,それぞれ,
3k(k−1)+1
2k(k−1)+1
になるというわけである.
しかし,任意のn(≧5)角形では,与えられた図形に数えられない部分が生ずるので,同様の公式は存在しないことになる.
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【2】自分の定理を発見しよう
三角形の場合,辺の中点を3等分点に変えて作ったダイヤグラムでは面白い性質は発見できなかったが,平行四辺形の辺の中点を3等分点に変えて作ったダイヤグラムでは,重なっている小さい平行四辺形は互いの辺を3等分するのではなく,辺を分割する比は4:5:3になっていた.これは中川宏さんが発見した「自分の定理」であろう.
また,
[1]正v角形(頂点数v)が半径1の円に内接しているとき
[2]正多面体(頂点数v)が半径1の球に内接しているとき
いずれの場合であっても,すべての辺と対角線の長さの平方和はv^2で与えられることが確かめられた.ここまでくれば4次元の正多胞体の場合もそうに違いないと予想がつくが,はたせるかな,すべての次元で単位球に内接する正多胞体(頂点数v)のすべての辺と対角線の長さの平方和はv^2で与えられることがわかった.これも本コラムが初出であろうと思う.
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