球面上の有限個の点の集合で,よい性質をもつものは? というきわめて漠然,曖昧模糊とした問題を考えると,これはある意味で,球によって最もよく近似できるn頂点あるいはn面の多面体を求める問題であり,球面に内接する正多面体の頂点のつくる集合は,いろいろな意味でその例といえるでしょう.
さらに,凸な一様多面体(面が正則,頂点が等価)であるプラトン立体,アルキメデス立体,半正則プリズム,反プリズムなどがよい性質をもつ多面体の例となり得るでしょうし,一様な多面体の他に,すべての面が正多角形である凸多面体(ザルガラー多面体)が正多面体,準正多面体を除くと92種類存在することもわかっています.角錐,角柱,重角錐,重角錐台,ねじれ角錐台,ねじれ重角錐台,・・・
ところで,正多面体の頂点は外接球上に分布していますが,どの2点の最短距離もできるだけ大きくなるような点の分布をなしているとは限りません.たとえば,6個あるいは12個の点の分布はそれぞれ正八面体と正20面体になりますが,8個の点については立方体にはならないからです.
さらに,正則な配置問題だけでなく,任意の不規則な配置も考慮に入れられるのですが,たとえば,7個の点の球面最小距離を最大にするミニマックス問題,マックスミニ問題となるとどうしてよいのやらわかりません.
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【1】球面上の点配置のミニマックス問題
コラム「幾何学的不等式への招待(その4)」で述べたことを使うと,ミニマックス問題の解は,n=4,6,12の場合には,それぞれ正4面体,正8面体,正20面体の頂点に一致するような配置が導かれます.
n=8の解は,ちょっと考えると立方体になりそうですが,そうではなく,単位球に内接し8個の頂点をもつ反プリズム(2個の正方形と8個の正三角形からなる)になります.
n=24ではアルキメデスの多面体であるねじれ立方体(3,3,3,3,4)の頂点,すなわち,ねじれ立方体の24個の頂点は外接球面上にS4変換群となるように分布していますが,これらはどの2点の最短距離もできるだけ大きくなるような点の分布をなしているというわけです.
n=20は未解決のまま残っています.n≦12とn=24のときだけ正確な答えが知られているのですが,n=3,4,6,12はトート,n=5,7,8,9はシュッテとファン・デル・ヴェルデン,n=10,11はDanzer, Hars, Boeroeczky,n=24(ねじれ立方体)はシュッテとファン・デル・ヴェルデンが予想し,1959年にロビンソンによって解かれました.n=5は正八面体の6頂点から1点を除いた5点,n=11は正二十面体の12頂点から1点を除いた11点.)
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【2】球面上の点配置のマックスミニ問題
一方,マックスミニ問題の解は,n=6のとき,正則な二重ピラミッドの頂点,n=12のとき,反プリズム的二重ピラミッドの頂点であることが導かれています.二重ピラミッドとは,プリズムあるいは反プリズムの底面および上面にそれぞれひとつずつピラミッドをおくときにできる立体です.
n≦7とn=10,12,14のときだけ正確な配置が知られています.
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