ベキ和の公式
Σk^s=1^s+2^s+3^s+・・・+n^s
Σk=n(n+1)/2
Σk^2=n(n+1)(2n+1)/6
Σk^3=n^2(n+1)^2/4
Σk^4=n(n+1)(2n+1)(3n^2+3n−1)/30
Σk^5=n^2(n+1)^2(2n^2+2n−1)/12
Σk^6=n(n+1)(2n+1)(3n^4+6n^3−3n+1)/42
Σk^7=n^2(n+1)^2(3n^4+6n^3−n^2−4n+2)/24
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ですから,左辺はsが偶数のときn(n+1)(2n+1)(多項式)/(整数),1以外の奇数のときn^2(n+1)^2(多項式)/(整数)と書くことができます.また,Σk^sは(s+1)次の多項式になり,最高次数の係数は1/(s+1)です.
1+2+3+・・・+n=n(n+1)/2
1^2+2^2+3^2+・・・+n^2=n(n+1)(2n+1)/6=n(n+1/2)(n+1)/3
となれば次は
1^3+2^3+3^3+・・・+n^3=n(n+1/3)(n+2/3)(n+1)/4
が予想されるところですが,
1^3+2^3+3^3+・・・+n^3={n(n+1)/2}^2
また,3乗の和は和の2乗である
1^3+2^3+3^3+・・・+n^3=(1+2+3+・・・+n)^2
ことに驚かされ,お気に入りの恒等式になったという経験をお持ちの読者も少なくないでしょう.
今回のコラムでは,sが奇数の場合に
Σk^s=1^s+2^s+3^s+・・・+n^s
が
Σk=1+2+3+・・・+n=n(n+1)/2
で割り切れることを証明してみます.
1^s+2^s+3^s+・・・+n^s=0 (mod n(n+1)/2)
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【1】n=2m+1の場合
1^s+2^s+3^s+・・・+n^s=0 (mod n(n+1)/2)
は
1^s+2^s+・・・+(2m)^s=0 (mod m(2m+1))
になるが,mと2m+1は互いに素であるから,
1^s+2^s+・・・+(2m)^s=0 (mod 2m+1)
かつ
1^s+2^s+・・・+(2m)^s=0 (mod m)
を証明することと同値である.
まず
1^s+2^s+・・・+(2m)^s=0 (mod 2m+1)
から始めるが,mod 2m+1より,2m=−1,2m−1=−2,・・・
したがって,
1^s+2^s+・・・+(2m)^s
=1^s+2^s+・・・+m^s+(−1)^s+(−2)^s+・・・+(−m)^s=0 (mod 2m+1)
=0 (∵sは奇数)
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【2】n=2mの場合
次に
1^s+2^s+・・・+(2m)^s=0 (mod m)
であるが,mod mより,m=0,m+1=1,・・・
1^s+2^s+・・・+(2m)^s
=1^s+2^s+・・・+m^s+m^s+(m+1)^s+・・・+(2m)^s
=1^s+2^s+・・・+0^s+0^s+1^s+・・・+0^s
=2(1^s+2^s+・・・+(m−1)^s) (mod m)
ここで,mが奇数ならば
2(1^s+2^s+・・・+(m−1)^s) (mod m)
=2(1^s+・・・+((m−1)/2)^s+(−(m−1)/2)^s+・・・+(−1)^s)=0となるし,mが偶数ならば(m=2k)
2(1^s+2^s+・・・+(m−1)^s)=2k^s=0 (mod 2k)
となって証明されたことになるのである.
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【3】ベルヌーイ数とベルヌーイ多項式
sが偶数の場合は読者の演習問題とします.ベルヌーイはこの式の列
Σk=n(n+1)/2
Σk^2=n(n+1)(2n+1)/6
Σk^3=n^2(n+1)^2/4
Σk^4=n(n+1)(2n+1)(3n^2+3n−1)/30
Σk^5=n^2(n+1)^2(2n^2+2n−1)/12
Σk^6=n(n+1)(2n+1)(3n^4+6n^3−3n+1)/42
Σk^7=n^2(n+1)^2(3n^4+6n^3−n^2−4n+2)/24
を見て,次のようなパターンを発見しました.
それを一般式の形で書くと,S(s,n)=Σk^sは
S(s,n)=1/(s+1){B0n^(s+1)+(s+1,1)B1n^s+・・・+(s+1,s)Bsn}
=1/(s+1)Σ(K=0-s)(s+1,k)Bk(n+1)^(s+1-k)
と,ベルヌーイ数Bnを含む式で表すことができます.
具体的に係数Bn を求めてみましょう.有名なベルヌーイ数列{Bn}の指数型母関数はx/(exp(x)−1)で与えられます.すなわち,ベルヌーイ数は
x/(exp(x)−1)
=B0/0!+B1/1!x+B2/2!x^2+B3/3!x^3+・・・
=ΣBnx^n/n!
で定義される有理数で,係数Bnはベルヌーイ数と呼ばれます.容易にわかるように,lim(x→0)x/(exp(x)−1)=1が成立します.
定義より,ベルヌーイ級数は,べき級数
(exp(x)−1)/x=1+1/2!x+1/3!x^2+1/4!x^3+・・・
の反転級数と考えることができます.
exp(x)=1+1/1!x+1/2!x^2+・・・
ですから
x/(exp(x)−1)
=x/(x+x^2/2!+x^3/3!+・・・)
=1/(1+x/2!+x^2/3!+・・・)
=1-(1+x/2!+x^2/3!+・・・)+(1+x/2!+x^2/3!+・・・)^2-・・・
=1-1/2x+1/6x^2-1/30x^4+・・・
これより,B0=1,B1 =−1/2で
x/(exp(x)−1)−B1 /1!x=x/2・(exp(x)+1)/(exp(x)−1)
は偶関数ですから,奇数項は第一項以外は0で,偶数項はB2=1/6,B4=−1/30,B6=1/42,B8=−1/30,B10=5/66,B12=−691/2730,B14=7/6,B16=−3617/510,B18=43867/798であとは分子が急速に大きくなり,たとえば,B32=−7709321041217/510,B34=2577687858367/6です.分母は必ず6で割り切れます.
ベルヌーイ数については,再帰公式
(B+1)^n-B^n=0
が成り立ちます.ただし,2項展開してからB^nをBnで置き換えることにします.ベルヌーイ数は数多くの魅惑的な整数論的特性をもっていて,正則素数の判定にも顔を出す興味深い数となっています.
また,ベルヌーイ多項式の最初のいくつかは
B0(x)=1
B1(x)=x−1/2
B2(x)=x^2−x+1/6
B3(x)=x^3−3x^2/2+x/2
B4(x)=x^4−2x^3+x^2−1/30
B5(x)=x^5−5x^4/2+5x^3/3−x/6
B6(x)=x^6−3x^5+5x^4/2+x^2/2+1/42
B7(x)=x^7−7x^6/2+7x^5/2+7x^3/6+x/6
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