■正多角形の近似作図問題

 定規とコンパスだけで正3角形、正4角形、正6角形、正8角形が作図できることは簡単にわかりますが,辺の数5,7,9の場合はどうでしょうか.正5角形は古代ギリシャにおいて作図可能であることが発見されました.となれば,次に正7角形・正9角形の作図は?と考えるのは自然な成り行きでしょう.ところが,かのアルキメデスでさえも正7角形・正9角形の作図に成功しなかったといわれています.

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【1】近似的な内接正13角形の作図

 内接正多角形の作図は画家であり建築家であるレオナルド・ダ・ヴィンチの関心を惹きました.しかし,彼でさえ近似的な内接正七角形の作図を正確なものと思っていたようです.

 ところで,正方形の辺の2等分点を使った作図が黄金比あるいは正五角形の作図に繋がっているのですが,正17角形の作図には4等分点が使われているそうです.中川宏さんはそれをもとにして近似的な内接正13角形の作図を考案されました.彼の発想は以下のようなものです.

(1)直角をはさむ二辺の比が1:nの直角三角形はn^2+1等分できる.

(2)n=2のとき正五角形,n=3のとき正十角形の作図が可能

(3)n=4のとき正17角形の作図が可能.

(4)n=5のとき正26角形の作図と関係するならば,正13角形も描けるはず・・・.

 正13角形は作図不可能であることが証明されているのですが,近似的な作図法は存在するはずです.そこで,

(1)半径OBの5等分点Iをとる.

  ∠OIE=∠AIO/4,∠FIE=45°

(2)半径XOBを切る点をKとする.

(3)Fを中心として,Kを通る円がP0Aと交わる点をN2,N4とする.

(4)直径N2N4の円の接線が直径AP0の円と交わる点が正13角形の4頂点となる.

 中川さんの近似作図法で正17角形の場合と違っているのは点Iと点Kの取り方だけだそうです.

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【2】正17角形の作図

 辺数3,4,5,6,8,10,12,15,16の正多角形は作図できますが,辺数7,9,11,13,14の正多角形は作図できないことから,正17角形もそうであろうと推察されます.ところが,1796年,ガウスは19才のときに正17角形の作図を思いつき,のみならず,nが素数の正n角形について,n=2^(2^m)+1が素数の場合に限り定規とコンパスだけで作図可能であることを発見しています.

 正7角形も正9角形も作図できないのに,まさか正17角形が作図できるとはと思うのが普通なのでしょうが,このことを用いると,m=0のとき正3角形,m=1のとき正5角形,m=2のとき正17角形となり,作図可能であることがわかります.当然,ずっと面倒になるでしょうが,正257角形(m=3),正65537角形(m=4)も作図可能です.

 2^(2^m)+1の形の素数をフェルマー素数といいます.フェルマー素数はガウスによって1世紀にわたる眠りから覚まされ,数論と幾何学に新たな美しさを吹き込んだことになります.フェルマーはこの型の数がすべて素数だと勘違いしていて必ず素数を与える式として考え出されたのですが,m=5のときは素数ではなく,現在,m=0,1,2,3,4の5個以外にフェルマー素数はみつかっていません.6番目のフェルマー素数の探索がコンピュータを使ってなされていますが,はたして本当に存在するのでしょうか.

 アルキメデスは円柱とそれに内接する球の体積比が3:2であることを発見した記念に,自分の墓の上に円柱の形をした記念碑をおくように遺言したといわれています.アルキメデスと同じように,ガウスは正17角形を墓石に彫るよう遺言しています.このことはガウス自身がその発見をいかに重視したかを物語っています.数々の大発見をしたガウスですが,19才の青年がアルキメデスをもってしてもできなかった古代ギリシア以来2000年の謎を解いたのですから,まさに驚きとしかいいようがありません.この正17角形の作図は彼を本格的に数学の道に入らせるきっかけとなったといわれています.

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