直角をはさむ二辺の比が、1:n の直角三角形は、n^2+1個の相似な直角三角形に合同分割できることがわかった。そこで、下の作図において必要となった正方形のほうに視点をかえて調べてみることにした。
まず、正方形はそれぞれ何個の直角三角形に分割されるのか数えてみた。逐一かぞえるのは芸がないので、塊に分けて考えることにした。
おおまかには、中央の正方形の塊と、大きな正方形の一辺を斜辺とする周辺部の直角三角形4つとみなすことができる。中央の正方形は(n −1)^2 個。周辺の直角三角形の部分は、n が奇数の場合は左下図のように、n が偶数の場合は右下図のように同じ色のピースが合わさって正方形になることから、正方形2n 個分である。これを合計すると、(n −1)^2+2n=(n^2+1)個分の正方形となる。・・・(*)
ひとつの正方形には、2n個の小さな直角三角形が含まれるので、直角三角形の総数は、
2n(n^2+1)
個である。
この数式について、佐藤先生から、魔方陣との関係を指摘いただいた。そこで調べてみると、魔方陣の一列(一行)の数の合計がn(n^2+1)/2とたしかになっていた。つまり4分の1である。
6 1 8
7 5 3
2 9 4
これはn=3のばあいの魔方陣であるが、魔方陣に含まれる数の総数は、1から、n^2 までの自然数の和であり、一列(一行)の数の和はそれをn で割った数である。したがって、n^2 (n^2+1 )/2n つまり、n (n^2+1 )/2 である。このときの(n^2+1 )は、最大の自然数と最小の自然数の和を意味している。
これに対して、正方形に含まれる1:n の直角三角形の数における(n^2+1 )は(*)に示されるように、正方形の格子分割を1目盛りずらしたときに1個分の正方形が増えることに由来している。
このことから、魔方陣との直接的な関連はないと思うのだが、正方形の格子分割を、1目盛りずらして捻った格子分割に置き換えると、ちょうど1個分の正方形を増やすことが出来るというのは、じつに不思議な性質のように感じられる。 (中川宏)