n次元立方体の基本単体の半切体の形だけを問題にする場合にはかえって座標を忘れて,単体を切った切り口がどうなるかを順次調べた方が早道である.今回のコラムでは,一松信先生に(その20)の解説をお願いすることにした.
まず最初に,5次元の場合の計算の補助として,各次元の胞の中心を通らずに切った場合の(一般の位置での)切断体の計算結果を紹介する.
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【1】n=2のとき
三角形.たまたまた頂点を通れば2個の三角形になるが,これは例外であって,普通は三角形と四角形になる.三角形は単体,四角形は単体柱(両端が1次元低い単体で,それを結ぶ柱状体)の象徴である.
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【2】n=3のとき
4面体の4個(n+1)の頂点を切断超平面の両側にどう配置すべきかが本質的.1+3なら1個の側が単体(四面体)で,他の側が三角柱状(6頂点9辺5面).2+2だと切り口は四角形,切片された片は両方とも三角柱状(6頂点9辺5面,三角形2四角形3)
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【3】n=4のとき
5個の頂点を切断超平面で分けると1+4か2+3(頂点を通る例外的な場合は当面必要ない).1+4は(n=3のときと同様に)一方が単体,他方が8頂点16辺12面(三角形8四角形6)6胞(4面体が2個,三角柱状が4個)になる.2+3は2個の側が8頂点16辺12面(三角形8四角形6)6胞(4面体が2個,三角柱状が4個),3個の側が9頂点18辺15面(三角形6四角形19)6胞(すべて三角柱状)となる.
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【4】n=5のとき
これは5次元単体を切断超平面の両側にそれぞれ3頂点がくるように切った3+3型の切断である.この場合,切り口は関連する1次元高い表面の胞の数から決まる.
[1]切り口の頂点はそこを通る3×3=9本の辺の交点→9個
[2]切り口の辺はそこを通るもとの単体の面の数:それは(6,3)=20枚の面のうち両側にある(切られない)2面を除く18面に対応→18本
[3]切り口の面はそこを通るもとの単体の3次元の胞の数:このときは15個の3次元の胞がすべて切られる.内訳は1+3型が6個,2+2型が9枚.[4]3次元の胞はもとの単体の房の切り口で,6房全部が切られる.6胞すべて2+3の型.
[5]結局,切り口の4次元胞は9頂点18辺15面6胞の形になる.
単体自体の切半体は次の通り
[1]頂点:元の頂点3+切り口上に9=合計12点
[2]辺:もとの辺(切られない)3+もとの単体の辺で途中で切られるもの9+切り口上の辺18=合計30本
[3]面:もとの面(切られない)1+もとの単体の面で途中で切られるもの18+切り口上の面15=合計34面
[4]胞:もとの胞はすべて切られ15胞+切り口上の胞6胞=合計21胞
[5]房:もとの房はすべて切られ6房+切り口上の房1房=合計7房
12+34+7=53=32+21+2でオイラーの公式が成立する.
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【5】5次元立方体の基本単体の半切体(まとめ)
5次元では
(f0,f1,f2,f3,f4)=(12,30,34,21,7)
となったが,2房が1つの胞を共有し,1つの面に3個の胞が集まり,1つの辺に4個の面が集まるなどから,相互の関係が検算できる.
[1]7房(4次元の表面)はすべて6胞(3次元の表面)で,3個は8頂点16辺12面(三角形8,四角形6)6胞(4面体2,三角柱状18),4個は9頂点18辺15面(三角形6,四角形9)6胞(すべて三角柱状)
各面に3胞,各辺に4胞
[2]21胞のうち4面体3,三角柱状18
[3]34胞のうち三角形16,四角形18
として数は合う.
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