どんな三角形も4,9,16,・・・,n^2個に合同分割できることは当然だが,直角をはさむ辺の長さが1:nの直角三角形は,特別にn^2+1個 にも合同分割できる.たとえば,n=2すなわち
(1)辺の長さが1:2:√5の直角三角形は同形4つだけでなく,5つにも分割できる特殊な三角形(レプ5三角形)である.
(2)辺の長さが1:1:√2の直角三角形(45°,45°,90°の三角形,三角定規のひとつ)は同形4つだけでなく,2つの同形にも分割できる特殊な三角形(レプ2三角形)である.
(新たに生じる三角形同士は合同である必要はないとして)n個の自分自身と相似な三角形に分割する問題は,n=2,n=3の場合は直角三角形のみがそのように分割可能である.
(2)辺の長さが1:1:√2の直角三角形(45°,45°,90°の三角形,三角定規のひとつ)は同形4つだけでなく,2つの同形にも分割できる特殊な三角形(レプ2三角形)である.
(3)辺の長さが1:√3:2の直角三角形(30°,60°,90°の三角形,三角定規のひとつ)は同形4つだけでなく,3つの同形にも分割できる特殊な三角形(レプ3三角形)である.
ところで,直角三角形(1)(2)(3)は平方根の螺旋「原点をO,点P1を(1,0)とします.点P1において長さ1の垂線P1P2⊥OP1を立て点P2(1,1)とします.すると,OP2=√2となります.さらに点P2において長さ1の垂線P2P3⊥OP2を立てます.OP3=√3となります.これを繰り返せば,1,√2,√3,・・・,√(n−1),√nが得られ,点P1,P2,・・・は螺線のような図形を作る.」に出現する直角三角形である.平方根の螺旋に出現する直角三角形は自分自身と相似なn個の三角形に分割できるだろうか?
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【1】平方根の螺線
この問題は1:√(n−1):√nの直角三角形が自分自身と相似な整数個の三角形に分割できるためのnを求めよという問題であるが,今回のコラムでは別の問題を取り上げたい.
[Q]動径ベクトルOPkの長さは√kになりますが,その偏角がπ,2πを越すときのkの値は?
[A]平方根の螺線はピタゴラスの定理に基づく有名な図形です.
θ=arctan(1/√(k−1))
としてΣθを求めると,
π→ k=7
2π→k=18
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[補]任意の三角形の3辺の中点を結ぶと,もとの三角形は合同な4つの三角形に分割される.新たに生じた三角形はもとの三角形と相似(相似比1:2)である.このように任意の三角形は自分自身と相似な4個の三角形に分けることができる.
新たに生じる三角形同士は合同である必要はないとして,n個の自分自身と相似な三角形に分割する問題は,n=4またはn≧6ならば可能であることが知られている.n=2,n=3の場合は直角三角形のみがそのように分割可能である.n=5,すなわち,5つの相似三角形に分割できる三角形は何かという問題では直角三角形は自分自身と相似な5個の三角形に分割できるが,それ以外に内角30°,30°,120°の二等辺三角形が可能である.5つの相似三角形に分割できる三角形はこの2種類のみであることが証明されている.
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【2】オイラー級数の螺線
オイラー級数を
Hn=1/1^2+1/2^2+1/3^2+1/4^2+・・・+1/n^2
と定義します.オイラー級数は次第に減少する項からなりますが,nを無限大にしたとき,無限級数
H∞=1/1^2+1/2^2+1/3^2+1/4^2+・・・=π^2/6
に収束します.
1734年,オイラーが当時懸案の大問題(バーゼル問題)を解いたのですが,次に,この漸近挙動を示す直角三角形連鎖を取り上げてみることにします.
原点をO,点P1を(1,0)とします.点P1において長さ1/2の垂線P1P2⊥OP1を立て点P2(1,1/2)とします.すると,OP2=√(1/1^2+1/2^2)となります.さらに点P2において長さ1/3の垂線P2P3⊥OP2を立てます.OP3=√(1/1^2+1/2^2+1/3^2)となります.これを繰り返せば,1,√(1/1^2+1/2^2),√(1/1^2+1/2^2+1/3^2),・・・,√(Σ1/k^2)が得られ,点P1,P2,・・・は螺線のような図形を作ります.
動径ベクトルOPkの長さは√(Σ1/k^2)になりますから,k→∞のとき, |OPk|→π/√6.また,
|OP1|+|P1P2|+・・・+|Pn-1Pn|=1+1/2+1/3+1/4+・・・→∞.
それでは動径ベクトルOPkの偏角がπ,2πを越すときのkの値は?
[A2]オイラー級数の収束速度は非常に遅く,その結果,点Pkはゆっくり外向きの螺線を描きながら半径π/√6の極限円に限りなく近づきます.
単精度で計算したので誤差があると思われるのですが,
θ=arctan(1/k√Hk-1)
としてΣθを求めると,
π→ k=69
2π→k=3858
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[補]ζ(1)は発散し,オイラーはζ(2)=π^2/6を証明した.すべての偶数sに対しζ(s)の値は無理数であるが,アペリは1979年にζ(3)が無理数であることを証明した.その後,2000年にリボールが無限個の奇数sに対しζ(s)が無理数であることを証明した.2001年にリボールはこの結果を精密化し,ζ(5)からζ(21)までの奇数sのうち少なくとも1つのsについて無理数であることを証明した.同年,ズディリンはこの範囲をζ(5)からζ(11)までに狭めることに成功した.
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