中川 宏
平方数の和の3倍を右のような図形で表現する「ピタゴラス学派の小石並べ」において、赤丸の部分は上下ともに、
一辺1の正方形/一辺2の正方形/…/一辺nの正方形が並んでいるので、
1の自乗+2の自乗+…+nの自乗
を表していることは一目瞭然なのだが、青丸の部分はエッフェル塔を横倒しにしたような妙な形をしていて、すぐにはそれが方法数の和を表していることも、どうしてこのような形になるのかも理解できなかった。
そこで、青丸の部分を長方形に分割して、縦×横で表してみた。(9×1)(7×2)(5×3)(3×4)(1×5)となった。すると、縦の数は奇数が徐々に小さくなって最後は1まで、横の数は自然数が徐々に大きくなってnまで、並んでいることが見えてきた。
奇数が関係しているので、ふと隣のページの奇数の和〜四角数という図(下)を見て、これだ!と直感した。
もっとも大きい奇数は1組、次に大きい奇数は2組、… もっとも小さい奇数=1はn個となる。おなじ奇数の組ごとにまとめて、L字に折れ曲がっている形をまっすぐに伸ばして並べてやれば(*)、横向きのエッフェル塔になるのだ。
しかし赤丸と青丸は常に必ずこのようにしっかりとかみ合う図形になるのか、気になった。約束事は赤丸図形を1マスあけて鏡対称に配置すること。右端から見ていくと、1マスぶんの隙間の長さは必ずn 。その隣の隙間の縦の長さは1+2=3つまり1の次の奇数、横の長さはn−1。順次縦の長さは2ずつ増えて奇数を順番にとっていき、他方横の長さは自然数を増やしていく。最後に左端は、横はもちろん1、縦は(2n+1)−2=2n−1、これは最大の四角数のもっとも外側のL字に折れ曲がっている形の数に間違いない。
ということで、n がいくつであろうとも、平方数の和3組は、横[1からn までの自然数の和]、縦[2n+1]の長方形に変形できることが確かめられた。
* 青丸部分の変形を視覚的に表現するには、真ん中で90度折れ曲がる奇数尺が教材としてふさわしいと感じた。
参考文献 「数学にさわろう!マセマティカル・アート展inICME-9」