■菱形多面体(その15)

 

 金原博昭さんによる黄金菱形と白銀2乗菱形を使った周期的なタイル貼り(その14)である.たとえば,黄金菱形の重心を結ぶと長方形になる.

 ペンローズの非周期的パターンは2種類の菱形(108°+72°,144°+36°)の組み合わせであり,どちらも黄金比や白銀比に基づいていないので,黄金菱形と白銀2乗菱形によるタイル貼りは,ペンローズ・パターンとはまったく異なるものである.この平面充填図形の意味するところは何なのだろうか?

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【1】J91充填との接点

 J91充填とは,正12面体+立方体+J91の3種類の多面体からなる充填構造のことである.前述のタイル貼りでは黄金菱形の重心を結ぶと長方形になるが,J91充填の場合は正12面体の重心を結ぶと立方体になる.また,正12面体は黄金比に基づく立体であり,立方体は白銀比に基づく立体であるから,J91にはこれらを繋ぐ連結立体として,黄金比と白銀比の両方が包含されていることになる.

 これまで知られている空間充填は白銀比に基づく周期的空間充填であるか,黄金比に基づく非周期的空間充填のどちらかであったが,

(1)J91充填(正12面体+立方体+J91)

(2)黄金菱形と白銀2乗菱形によるタイル貼り

は,いずれも白銀比と黄金比の混合充填(周期的)という共通点がある.

 金原博昭さんは,菱形90面体(白銀菱形60枚と黄金2乗菱形30枚からなる)から黄金菱形と白銀2乗菱形によるタイル貼りを閃いたという.白銀2乗菱形の辺長比は1:2:√5であるからそれ自身,混合菱形といってよいのかもしれない.混合充填にはまだ何か秘密が隠されているに違いない.今後の研究成果が楽しみである.

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