■n次元の立方体と直角三角錐(その16)

 n次元正単体の基本単体の切断において,n=2のとき,正単体(正三角形)の基本単体は正三角形の半分の形(30°,60°,90°の三角形,三角定規のひとつ)であり,合同(ただし裏返しも許す)な3個の同形に分割できる.

 その後,(その14)で述べた正四面体の4分割(おのおのは6面体)は,一般にn次元正単体をn+1個の合同な2n胞体に分割する一般論の特例であることがわかった.この問題を見て思い出したのが

  (Q)5つの合同三角形に分割できる三角形は何か?

  (Q)5つの相似三角形に分割できる三角形は何か?

という三角形分割の問題である.

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【1】三角形分割

 任意の三角形の3辺の中点を結ぶと,もとの三角形は合同な4つの三角形に分割される.新たに生じた三角形はもとの三角形と相似(相似比1:2)である.このように任意の三角形は自分自身と相似な4個の三角形に分けることができる.辺の長さが1:2:√5の直角三角形は同形4つだけでなく,5つにも分割できる特殊な三角形である.

 新たに生じる三角形同士は合同である必要はないとして,n個の自分自身と相似な三角形に分割する問題は,n=4またはn≧6ならば可能であることが知られている.n=2,n=3の場合は直角三角形のみがそのように分割可能である.直角の頂点から斜辺に垂線を下ろせばよい.

(A)n=5の場合,直角三角形は自分自身と相似な5個の三角形に分割できるが,それ以外に内角30°,30°,120°の二等辺三角形(1:1:√3)が可能である.

 30°,30°,120°の角をもつ三角形は,正三角形格子(3,6)の各面を3個の合同な三角形に分解することによってできるモザイク模様である.「麻の葉」文様と呼ばれるくり返し文様であり,日本では古くから装飾工芸品や寄木細工のデザインなどとして用いられているから,ご存じの方も多いと思う.

 自分自身と相似な5個の三角形に分割するには,内心で3等分した正三角形の2辺に相似な2等辺鈍角三角形をつける.5つの相似三角形に分割できる三角形はこの2種類のみであることがウシスキンとワイメントにより証明されている.

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