■n次元の立方体と直角三角錐(その15)

 (その14)の補足をしておきたい.空間や次元によって「直角」の性質は異なる.たとえば,

(1)三角形の内角の和は2直角である(内角和定理).

(2)直角三角形において,a^2+b^2=c^2が成り立つ(三平方の定理).

どちらも非ユークリッド幾何学,とくに前者は宇宙空間の構造(宇宙像),後者は高次元空間の設定(リーマン計量)に関係している.

 このシリーズではこれまで直角三角錐(RT,RP,・・・)がn次元の正多面体の元素定理の本質をなしていることをつきとめた.3次元正多面体の元素定理でカギを握っているのが直角三角錐(RT:right tetra)であることに気づけば,任意のn次元でも直角三角錐が有用になると考えるのは自然な発想,自然な成り行きであろう.

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 n次元の直角三角錐2^n個で正2^n胞体ができる.また,この図形n!個の体積は1辺の長さ2の正2n胞体(体積:2^n)と等しくなる.正2n胞体からはこの図形を2^n-1個を取り除くことができる.

[1]元素数の減少が起こる理由

 3次元では立方体から直角三角錐を4個取り除くと正四面体,4次元では正8胞体からRPを8個取り除くと16胞体になるため,元素数がひとつ減る.さらに,4次元の特殊性として192個のRPから正24胞体が構成されるため,もうひとつ元素数は減るのである.

[2]元素数の減少が起こらない理由

 5次元以上の空間では直角三角錘をn-1個を取り除くと正多面体にならず,1種の準正多面体になる.また,2次元では正方形から直角三角形を2個取り除くと何も残らない.これが各次元における元素定理の正体なのである.

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