■超立方体の基本単体の切断(その2)

 3次元の立方体の基本単体の半切体は5面・9辺・6頂点で,位相的には両側に三角形2枚,その間に四角形3枚からなる三角柱の形である.それでは,4次元の超立方体の基本単体を切断したときの形はどうになっているのだろうか?

 少なくともそれを取り囲む6個の胞(3次元の立体)の形だけでも調べることは意味があるだろう.一松信先生のご検討では4次元の超立方体の基本単体の半切体は6胞・14面・15辺・7頂点の立体であるとのことである.この検討結果は私にとっては驚愕的なものであって,故・乙部融朗氏が「計算が終わるまでにイメージが浮かぶのは一松先生のような大家のみかな」といっておられたことがいまさらながら思い出された.

 また,一松先生はコラム「超立方体の基本単体の切断」の記事をお読み下さり「偶数次元での胞数はn+1胞体と予想される」という記述の「誤り」も指摘して下さった.すなわち,何次元であってもn+1胞体は単体しかありえず,切断体の形としてはn+2胞体が正しいというご指摘であるが,今回のコラムではその点も訂正したいと思う.

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【1】4次元の場合の元素の形

 基本単体の頂点

  (0,0,0,0)=O

  (1,0,0,0)=D

  (1,1,0,0)=C

  (1,1,1,0)=B

  (1,1,1,1)=A

をOAの中点Mを通ってそれに垂直な超平面x1+x2+x3+x4=2で切る.この超平面はCを通るほか,次の点を通る.4交点は

  (1/2,1/2,1/2,1/2)=M

  (1,1/3,1/3,1/3)=F

  (2/3,2/3,2/3,0)=E

  (1,1/2,1/2,0)=N

である.

 この3次元切り口はM,N,C,E,Fを5頂点とする四角錐である.このうち,M,N,E,Fはx1+x2+x3+x4=2,x2=x3で表される2次元平面上にあり,凧型である.凧型MNEFは辺の長さ1:√2:√3の直角三角形の斜辺(MN)を併せてできる形で,

  ∠EMF=arccos(1/3)    (正四面体の二面角)

  ∠ENF=arccos(−1/3)   (正八面体の二面角)

  ME=MF=1/√3

  EN=NF=1/√6

  MN=1/√2

  EF=2/3

全体はこの凧型をCから射影した四角錐である.

 したがって,半片のうちO,D側をとると,頂点は7点:O,D,C,M,N,E,F.このうちM,N,E,Fはx1+x2+x3+x4=2,x2=x3で表される2次元平面上にあるが,そのほか,次の4点ずつが同一の2次元平面上にある.

  O,D,M,F:x2=x3,x3=x4で表される平面

  O,D,N,E:x2=x3,x4=0で表される平面

 MF,ENの延長はODの延長と(2,0,0,0)で交わる.したがって,前記7頂点を2個ずつ結ぶ線分のうち,MN,EF,DF,MD,ON,EDの6本は1つの面上に退化し,多胞体の辺(稜)にはならない.辺は7C2−6=15本である.

 胞は次の6胞である.それを表す超平面とそのうえにある頂点を示す.

x1+x2+x3+x4=2:M,N,E,F,C   四角錐(頂点C,5面)

x2=x3       :O,D,M,N,E,F 三角柱(5面)

x3=x4       :O,D,C,M,F   四角錐(頂点C,5面)

x4=0        :O,D,C,N,E   四角錐(頂点C,5面)

x1=1        :D,C,N,F     三角錐(四面体,4面)

x1=x2       :O,C,M,E     三角錐(四面体,4面)

 こらら6個の超平面は独立で,これ以上の退化は生じない.面は合計

  (5×4+4×2)÷2=14面

である.うち上記3平面が四角形,他の11枚が三角形.

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 前記の座標から辺の長さはすべて容易に計算できる.

  OD=DC=1,OM=1,OE=2/√3,OC=√2,MC=1,

  DN=1/√2,DF=1/√3,ME=MF=1/√3,

  NE=NF=1/√6,CN=1/√2,CE=CF=√(2/3)

辺にならない退化した対角線は

  MN=1/√2,EF=2/3,OF=2/√3,DE=1,DM=1,

  ON=√(3/2)

 面はMENF,ODFM,ODNEが四角形,他の11面(ODC,DFN,DFC,CNE,CNF,CME,CMF,OME,DCN,OCE,OCM)が三角形.

 辺にはすべて3面,3胞が交わる.このことは4角形×3個+3角形×11個=45=3×15本.また,5面5頂点の3次元多面体は四角錐(8辺)に限られ,5面6頂点の3次元多面体は位相的には三角柱(9辺)の形になることから,胞の辺はのべ8辺×3個+9辺×1個=45=3×15辺より納得される.

 前述x2=x3での切り口(6頂点体)はMENF,MFOD,NEODが四角形で,3辺MF,NE,ODで境され,上下に△DFNと△OMEがふたをしている三角柱状である.

 頂点から出る辺の数(グラフ理論でいえば枝数)は退化が生じている頂点Cが6枝(CO,CD,CE,CF,CN,CMと他の全頂点と直接に結ばれる).他の6頂点は4枝(4×6+6×1=30=2×15本).四角錐3個はすべて頂点Cが4枝であり,三角柱状の形(x2=x3による切り口)は唯一頂点Cを含まない.

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【2】まとめ

[1]nが奇数の場合(n=2k−1)

  c(n)=n+2

  v(n)=k(k+1)

[2]nが偶数の場合(n=2k)

  c(n)=n+2

  v(n)=k^2+k+1

 nが偶数のときにはn/2次元(中央の次元)の胞の中心を半切面が通るため「退化」が生じ,いくつかの辺の切り口(面)がそこに集中するため,頂点の実個数が減ると理解される.その意味で,3次元と4次元の場合が奇数次元と偶数次元の典型であり,半切体はn+2胞になる.

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