■超立方体の基本単体の切断

 ペンタドロンは立方体の基本単体をその最長辺の垂直2等分面で切断した立体である.ペンタドロンを使えば5種類ある平行多面体をすべて作ることができる.ペンタドロンをσで表すことにするが,立方体はσ12(σ96),6角柱はσ144,菱形12面体はσ192,長菱形12面体はσ384,切頂8面体はσ48という分子構造になっている.

 すなわち,ペンタドロンをうまく組み合わせると,立方体・菱形十二面体・切頂八面体などの空間充填形(平行多面体)ができるが,平行多面体がこのような1種類の素材だけで組み立てることができるのは驚きである.

 3次元平行多面体の場合,立方体の基本単体を2等分することによって切頂八面体の元素ができ,それを使うと他の平行多面体も作ることができた.n次元平行多面体の面数は最大2(2^n−1)個,最小2n個となること(ミンコフスキーの定理)より,n次元の立方体と切頂八面体に共通する元素を作ることができれば,それがn次元平行多面体の元素となりうる可能性は大である.

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【1】n次元の立方体の基本単体

 n次元の立方体の基本単体数gは

  g=2^n・n!

となるが,辺の長さはどうなるのだろうか?

 n次元立方体の頂点を(±1,±1,・・・,±1)とおくと,この超立方体の稜の長さは2である.面心の座標は

  (±1,0,・・・,0)

  (0,±1,・・・,0)

  ・・・・・・・・・・・・

  (0,0,・・・,±1)

で,

  on-1(1,0,・・・,0)

を代表とすることができる.一方,体心onの座標は

  on(0,0,・・・,0)

であるから,on-1on=1

 同様に

  on-2(1,1,0,・・・0,0)

  ・・・・・・・・・・・・・・・・

  o1(1,1,1,・・・1,0)

  o0(1,1,1,・・・1,1)

であるから,

  o0o1=1,o1o2=1,・・・,on-1on=1

  o0on=√n,o1on=√(n−1),・・・,on-1on=1

などとなる.

 稜数は(n+1)n/2であるから,残りも求めてみると

  o0o0=0,o1o0=1,o2o0=√2,・・・,ono0=√n

  o0o1=1,o1o1=0,o2o1=1,・・・,ono1=√(n−1)

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  o0on-1=√(n−1),o1on-1=√(n−2),o2on-1=√(n−3),・・・,onon-1=1

  o0on=√n,o1on=√(n−1),o2on=√(n−2),・・・,onon=0

より,辺の長さはすべて1,√2,・・・,√nである.

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【2】n次元の立方体の基本単体の分割

 立方体[0,1]^nに対して,

  on(0,0,0,・・・0,0)

  o0(1,1,1,・・・1,1)

を結ぶ対角線の中点

  (1/2,1/2,1/2,・・・,1/2,1/2)

を通る超平面

  x1+x2+x3+・・・+xn=n/2

と各辺の交点を求めてみることにします.

 計算の都合上,pk=on-kとおきます.

  p0(0,0,・・・,0)

  p1(1,0,・・・,0)

  p2(1,1,0,・・・0,0)

  ・・・・・・・・・・・・・・・・

  pn-1(1,1,1,・・・1,0)

  pn(1,1,1,・・・1,1)

ですから,直線p0pnは

  x1=x2=・・・=xn

で表されます.したがって,p0pnとの交点は

  (1/2,1/2,1/2,・・・,1/2,1/2)

 直線p1pnは,

  x1=1,x2=・・・=xn

したがって,p1pnとの交点は(1,(n−2)/2(n−1),・・・,(n−2)/2(n−1))

 直線p2pnは,

  x1=x2=1,x3=・・・=xn

したがって,p2pnとの交点は(1,1,(n−4)/2(n−2),・・・,(n−4)/2(n−2))

n=3の場合は(n−4)/2(n−2)<0となって交わらないことがわかります.n=4の場合は(1,1,0,0)となってp2と一致します.

 直線p3pnは,

  x1=x2=x3=1,x4=・・・=xn

したがって,p2pnとの交点は(1,1,1,(n−6)/2(n−3),・・・,(n−6)/2(n−3))

n=4の場合は(n−6)/2(n−3)<0となって交わりません.

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 次にp0を通る直線の場合を調べてみます.直線p0p1は

  x2=・・・=xn=0

ですから,x1=n/2となって,n>2のとき交わらないことがわかります.

 直線p0p2は

  x1=x2,x3=・・・=xn=0

ですから,x1=x2=n/4となって,n≦4のときのみ交わります.n=4のとき交点は(1,1,0,0)となって,p2と一致します.

 直線p0p3は

  x1=x2=x3,x4=・・・=xn=0

ですから,x1=x2=x3=n/6となって,n≦6のときのみ交わります.n=4のとき交点は(2/3,2/3,2/3,0)となります.

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 次にp1を通る直線の場合を調べてみます.直線p1p2は

  x1=1,x3=・・・=xn=0

ですからx2=(n−2)/2.したがって,交点は

  (1,(n−2)/2,0,・・・,0)

となります.2≦n≦4のときのみ交わり,n=4のときp2と一致します.

 直線p1p3は

  x1=1,x4=・・・=xn=0

ですから,x2=x3=(n−2)/4.交点は

  (1,(n−2)/4,(n−2)/4,0,・・・,0)

となって,2≦n≦6のときのみ交わります.n=4のとき交点は(1,1/2,1/2,0)となります.

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 p2を通る直線p2p3では

  x1=x2=1,x4=・・・=xn=0

ですからx3=(n−4)/2.したがって,交点は

  (1,1,(n−4)/2,0,・・・,0)

となります.4≦n≦6のときのみ交わり,n=4のときp2と一致します.

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【4】4次元の場合の元素の形

 ペンタドロンの空間座標は,基本単体の頂点

  p0(0,0,0)

  p1(1,0,0)

と4交点

  (1/2,1/2,1/2)

  (1,1/4,1/4)

  (1,1/2,0)

  (3/4,3/4,0)

である.

 それでは,4次元の元素の形はどうになっているのだろうか? 少なくともそれを取り囲む6個の胞(3次元の立体)の形だけでも調べることは意味があるだろう.

 基本単体の頂点

  p0(0,0,0,0)

  p1(1,0,0,0)

  p2(1,1,0,0)

  p3(1,1,1,0)

  p4(1,1,1,1)

と前節で求めた4交点

  (1/2,1/2,1/2,1/2)

  (1,1/3,1/3,1/3)

  (2/3,2/3,2/3,0)

  (1,1/2,1/2,0)

はすでにわかっている.また,4次元の立方体の基本単体の稜数は10であるから,これ以外に交点ははない.

 したがって,x1+x2+x3+x4≦2の部分をとると,7頂点

  q0(0,0,0,0)

  q1(1,0,0,0)

  q2(1,1,0,0)

  q3(1/2,1/2,1/2,1/2)

  q4(1,1/3,1/3,1/3)

  q5(2/3,2/3,2/3,0)

  q6(1,1/2,1/2,0)

が元素の頂点となる.q2〜q6は超平面x1+x2+x3+x4=2上にある.これが768個で4次元立方体を組み立てることができる.

 辺の長さは

  q0q1=1,q0q2=√2,q0q3=1,q0q4=√(4/3),q0q5=√(4/3),q0q6=√(3/2)

  q1q2=1,q1q3=1,q1q4=√(1/3),q1q5=1,q1q6=√(1/2)

  q2q3=1,q2q4=√(2/3),q2q5=√(2/3),q2q6=√(1/2)

  q3q4=√(1/3),q3q5=√(1/3),q3q6=√(1/2)

  q4q5=2/3,q4q6=√(1/6),q5q6=√(1/6)

 それに対して,x1+x2+x3+x4≧0の部分をとると,7頂点

  q0(1,1,1,1)

  q1(1,1,1,0)

  q2(1,1,0,0)

  q3(1/2,1/2,1/2,1/2)

  q4(1,1/3,1/3,1/3)

  q5(2/3,2/3,2/3,0)

  q6(1,1/2,1/2,0)

が元素の頂点となる.q2〜q5は超平面x1+x2+x3+x4=2上にある.辺の長さは

  q0q1=1,q0q2=√2,q0q3=1,q0q4=√(4/3),q0q5=√(4/3),q0q6=√(3/2)

  q1q2=1,q1q3=1,q1q4=1,q1q5=√(1/3),q1q6=√(1/2)

  q2q3=1,q2q4=√(2/3),q2q5=√(2/3),q2q6=√(1/2)

  q3q4=√(1/3),q3q5=√(1/3),q3q6=√(1/2)

  q4q5=2/3,q4q6=√(1/6),q5q6=√(1/6)

となって辺の長さは変わらず,基本単体の2分割体になっていることがわかる.

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【5】5次元の場合の元素の形

 直線p1pnは,

  x1=1,x2=・・・=xn

したがって,p1pnとの交点は(1,(n−2)/2(n−1),・・・,(n−2)/2(n−1)).n=5の場合は(1,3/8,3/8,3/8,3/8)となります.

 直線p2pnは,

  x1=x2=1,x3=・・・=xn

したがって,p2pnとの交点は(1,1,(n−4)/2(n−2),・・・,(n−4)/2(n−2))

n=3の場合は(n−4)/2(n−2)<0となって交わらないことがわかります.n=5の場合は(1,1,1/6,1/6,1/6)となります.

 直線p3pnは,

  x1=x2=x3=1,x4=・・・=xn

したがって,p2pnとの交点は(1,1,1,(n−6)/2(n−3),・・・,(n−6)/2(n−3))

n=5の場合は(n−6)/2(n−3)<0となって交わりません.

 直線p4pnは,

  x1=x2=x3=x4=1,x5=・・・=xn

したがって,p2pnとの交点は(1,1,1,(n−8)/2(n−4),・・・,(n−8)/2(n−4))

n=5の場合は(n−8)/2(n−4)<0となって交わりません.

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 次にp0を通る直線の場合を調べてみます.直線p0p1は

  x2=・・・=xn=0

ですから,x1=n/2となって,n>2のとき交わらないことがわかります.

 直線p0p2は

  x1=x2,x3=・・・=xn=0

ですから,x1=x2=n/4となって,n≦4のときのみ交わります.

 直線p0p3は

  x1=x2=x3,x4=・・・=xn=0

ですから,x1=x2=x3=n/6となって,n≦6のときのみ交わります.n=5のとき交点は(5/6,5/6,5/6,0,0)となります.

 直線p0p4は

  x1=x2=x3=x4,x5=・・・=xn=0

ですから,x1=x2=x3=n/8となって,n≦8のときのみ交わります.n=5のとき交点は(5/8,5/8,5/8,5/8,0)となります.

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 次にp1を通る直線の場合を調べてみます.直線p1p2は

  x1=1,x3=・・・=xn=0

ですからx2=(n−2)/2.したがって,交点は

  (1,(n−2)/2,0,・・・,0)

となります.2≦n≦4のときのみ交わります.

 直線p1p3は

  x1=1,x4=・・・=xn=0

ですから,x2=x3=(n−2)/4.交点は

  (1,(n−2)/4,(n−2)/4,0,・・・,0)

となって,2≦n≦6のときのみ交わります.n=5のとき交点は(1,3/4,3/4,0,0)となります.

 直線p1p4は

  x1=1,x5=・・・=xn=0

ですから,x2=x3=x4=(n−2)/6.交点は

  (1,(n−2)/6,(n−2)/6,(n−2)/6,0,・・・,0)

となって,2≦n≦8のときのみ交わります.n=5のとき交点は(1,1/2,1/2,1/2,0)となります.

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 p2を通る直線p2p3では

  x1=x2=1,x4=・・・=xn=0

ですからx3=(n−4)/2.したがって,交点は

  (1,1,(n−4)/2,0,・・・,0)

となります.4≦n≦6のときのみ交わります,n=5のとき交点は(1,1,1/2,0,0)となります.

 p2を通る直線p2p4では

  x1=x2=1,x5=・・・=xn=0

ですからx3=x4=(n−4)/4.したがって,交点は

  (1,1,(n−4)/4,(n−4)/4,0,・・・,0)

となります.4≦n≦8のときのみ交わります,n=5のとき交点は(1,1,1/4,1/4,0)となります.

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 p3を通る直線p3p4では

  x1=x2=x3=1,x5=・・・=xn=0

ですからx4=(n−6)/2.したがって,交点は

  (1,1,1,(n−6)/2,0,・・・,0)

となります.6≦n≦8のときのみ交わります.

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 基本単体の頂点

  p0(0,0,0,0,0)

  p1(1,0,0,0,0)

  p2(1,1,0,0,0)

  p3(1,1,1,0,0)

  p4(1,1,1,1,0)

  p5(1,1,1,1,1)

と前節で求めた9交点

  (1/2,1/2,1/2,1/2,1/2)

  (1,3/8,3/8,3/8,3/8)

  (1,1,1/6,1/6,1/6)

  (5/6,5/6,5/6,0,0)

  (5/8,5/8,5/8,5/8,0)

  (1,3/4,3/4,0,0)

  (1,1/2,1/2,1/2,0)

  (1,1,1/4,1/4,0)

  (1,1,1/2,0,0)

から,x1+x2+x3+x4+x5≦5/2の部分をとると,12頂点

  q0(0,0,0,0,0)

  q1(1,0,0,0,0)

  q2(1,1,0,0,0)

  q3(1/2,1/2,1/2,1/2,1/2)

  q4(1,3/8,3/8,3/8,3/8)

  q5(1,1,1/6,1/6,1/6)

  q6(5/6,5/6,5/6,0,0)

  q7(5/8,5/8,5/8,5/8,0)

  q8(1,3/4,3/4,0,0)

  q9(1,1/2,1/2,1/2,0)

  q10(1,1,1/4,1/4,0)

  q11(1,1,1/2,0,0)

が元素の頂点となる.q3〜q11は超平面x1+x2+x3+x4+x5=5/2上にある.これが7680個で5次元立方体を組み立てることができる.

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【6】n次元の場合の元素の形

 n次元立方体の基本単体の2分割体は,n=3のときv=6,n=4のときv=7,n=5のときv=12であった.v(n)は如何に? そこで,超平面x1+・・・+xn=n/2が直線pipjと交差するための条件を求めてみよう.端点で交差する場合は数えないことにする.

   p0     p1     p2     p3     p4     p5

p1 n<2   −     −     −     −     −

p2 n<4 2<n<4   −     −     −     −

p3 n<6 2<n<6 4<n<6   −     −     −

p4 n<8 2<n<8 4<n<8 6<n<8   −     −

p5 n<10 2<n<10 4<n<10 6<n<10 8<n<10   −

p6 n<12 2<n<12 4<n<12 6<n<12 8<n<12 10<n<12

[1]n=3のとき

   p0     p1     p2  

p1 n<2   −     −  

p2 n<4 2<n<4   −  

p3 n<6 2<n<6 4<n<6

の表の条件を満たすのは4点.さらに,基本単体の頂点でx1+x2+x3≦3/2を満たすのは[3/2]+1=2点で,合計6点.

[2]n=4のとき

   p0     p1     p2     p3  

p1 n<2   −     −     −  

p2 n<4 2<n<4   −     −  

p3 n<6 2<n<6 4<n<6   −  

p4 n<8 2<n<8 4<n<8 6<n<8

の表の条件を満たすのは4点.さらに,基本単体の頂点でx1+x2+x3+x4≦2を満たすのは[2]+1=3点で,合計7点.

[3]n=5のとき

   p0     p1     p2     p3     p4  

p1 n<2   −     −     −     −  

p2 n<4 2<n<4   −     −     −  

p3 n<6 2<n<6 4<n<6   −     −  

p4 n<8 2<n<8 4<n<8 6<n<8   −  

p5 n<10 2<n<10 4<n<10 6<n<10 8<n<10

の表の条件を満たすのは9点.さらに,基本単体の頂点でx1+x2+x3+x4+x5≦5/2を満たすのは[5/2]+1=3点で,合計12点.

[4]n=6のとき

   p0     p1     p2     p3     p4     p5

p1 n<2   −     −     −     −     −

p2 n<4 2<n<4   −     −     −     −

p3 n<6 2<n<6 4<n<6   −     −     −

p4 n<8 2<n<8 4<n<8 6<n<8   −     −

p5 n<10 2<n<10 4<n<10 6<n<10 8<n<10   −

p6 n<12 2<n<12 4<n<12 6<n<12 8<n<12 10<n<12

の表の条件を満たすのは9点.さらに,基本単体の頂点でx1+x2+x3+x4+x5+≦3を満たすのは[3]+1=4点で,合計13点.

 ここまでくれば結論を下すのは簡単である.

[1]nが奇数の場合

  v(n)=[(n+1)/2]^2+[n/2]+1

[2]nが偶数の場合

  v(n)=[n/2]^2+[n/2]+1

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【7】n次元の場合の元素の胞数

 基本単体の胞数はn+1である.前節では基本単体の2分割体の頂点数v(n)を求めたが,胞数c(n)については未解決である.とはいえ辺数e(n),面数f(n),・・・と地道に求めることは難しそうである.c(n)は簡単な形に表せるのだろうか?

 奇数次元では

  (n+1)+1=n+2胞体

になると思われるが,偶数次元では割面が基本単体の頂点pkを通る.n=2のときp1,n=4のときp2,n=6のときp3を通るが,割面は基本単体の1頂点しか通らないことがわかる.k=n/2,すなわち,一般に偶数次元)のときには,この超平面はn/2次元の胞の中心を通り,一種の退化を生じるのである.

 偶数次元での胞数はn+1胞体と予測されるが,n=4の場合を考察してみよう.4次元多胞体というのは3次元の多面体が2つでひとつの側面を共有しながらつながったものである.

  q0(0,0,0,0)

  q1(1,0,0,0)

  q2(1,1,0,0)

  q3(1/2,1/2,1/2,1/2)

  q4(1,1/3,1/3,1/3)

  q5(2/3,2/3,2/3,0)

  q6(1,1/2,1/2,0)

のq2,q3,q4,q5,q6は超平面x1+x2+x3+x4=2上にある.この超平面をπで表すことにする.

 超平面x4=0上にはq0,q1,q2,q5の4点が載る.すなわち,q0,q1,q2,q5を囲む胞は超平面x4=0で表される(πと2点を共有).

超平面x1=1上にはq1,q2,q4,q6の4点が載る=q1,q2,q4,q6を囲む胞は超平面x1=1で表される(πと3点を共有).さらに

q0,q2,q3,q5を囲む胞は超平面x1−x2=0で表される(πと3点を共有).

q0,q1,q3,q4,q5を囲む胞は超平面x2−x3=0で表される(πと3点を共有).

q0,q1,q2,q3,q4を囲む胞は超平面x3−x4=0で表される(πと3点を共有).

 超平面x4=0はπと側面を共有しないことがわかる.すなわち,ある頂点を通る通る超平面には基本単体となるn+1胞体のうちどうしても通れない1面ができてしまうのである.このことから偶数次元の場合はn+1胞体と考えられるのである.

[1]nが奇数の場合

  c(n)=n+2

  v(n)=[(n+1)/2]^2+[n/2]+1

[2]nが偶数の場合

  c(n)=n+1

  v(n)=[n/2]^2+[n/2]+1

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[補足1]permutahedron

 (基本単体でなく)立方体を,超平面|x1|+・・・+|xn|=n/2で切頂した「n次元切頂八面体」は(適当に拡大すると)頂点の座標データが整数座標(0,±1,±2,±3,・・・,±n−1)の点の置換2^(n-1)・n!個からなる多面体になる.この多面体はpermutahedronという族の多面体である.

 ところで,辺の長さが整数の多面体としては,シュテッフェン(ステファン?)の9つの頂点と14の三角形面からなる最も単純な折り曲げ可能多面体(1978年)やLoeckenhoff and Hellnerの空間充填18面体(1971年)がある.

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[補足2]ミンコフスキーの定理と原始的平行多面体

 一般に,n次元空間充填では,各頂点の周りに少なくともn+1個の多面体が集まる.n+1個のとき,n次元平行多面体の面数は最大2(2^n−1)個となる(ミンコフスキーの定理).

 すなわち,2次元平行多辺形は最大6辺,3次元平行多面体の面数は最大14面,4次元平行多胞体の胞数は最大30胞となる.

 4次元の場合,胞数が最大の30であるものが3つ

   P30=10P14+20P8

   P30=4P14+6P12+12P10+2P8+6P6

   P30=18P12+6P8+6P6

あるが,たとえば,P30=10P14+20P8は3次元の六角柱P8と切頂八面体P14を組み合わせた30胞体で,4次元空間の1種類だけの多胞体による空間充填図形である.

 これらが原始的4次元30胞体であるが,2次元の平行多面体は2種類(原始的1),3次元の平行多面体は5種類(原始的1)ある.4次元の平行多面体は,3次元の5種類から52種類(原始的3)へと急増する.また,5次元の場合には,103991種類と膨大で,原始的なものだけでも222種類見つかっている.5次元での平行多面体の状況ははるかに多様となって,そのリストアップはいまでも完成していない.

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