【1】ミウラ折り
宇宙構造物の設計者,三浦公亮先生は不思議な開閉をする折り畳み式構造物を考え出された.これがミウラ折りであるが,学問的な名称は「可展二重波形面」(DDC surface)で,いたるところガウス曲率が0の展開可能面である.折り紙でモデルを作ることができるのはそのためである.
ミウラ折りは人工衛星の展開式太陽電池パネルに採用された.また,非常に薄い材料でできた円柱,たとえば,缶ビールの空き缶を立てておいて軸に沿って均等に力をかけるとダイヤモンドパターンが現れる.このパターンは吉村慶丸教授にちなんで「吉村パターン」と呼ばれているが,三浦公亮先生はそれを円柱以外の一般曲面に発展させた.
実際,製造時に吉村パターンを実現させて,強度を保ちながら材料を約30%も減らしたキラキラ光るチューハイ缶が市販されているから,ご存じの方も多かろう.じつはこれももともと宇宙工学で考え出された頑丈な形であって,学問的な名称は「疑似円筒凹多面体」(略称PCCP).すなわち,アンチプリズムを重ねた疑似円筒形であって,そのガウス曲率はいたるところ0になっている.だから折り紙でモデルを作れるのだ.
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【2】interlocked element
ミウラ折りは巨視的には二重波形をしているが,微視的に見ると対称な4つの平行四辺形が結合した空間ユニットの繰り返し構造となっている.
先日,九州産業大学工学部の牛島邦晴先生からおもしろい話を窺った.正四面体を並べて外側を囲うと「接着なし」に強い強度が得られるのだそうである.このinterlocked element構造は隕石の衝突に耐えられる人工衛星のパネルとして応用可能だそうである.
正四面体に限らず,立方体や曲面体でもinterlocked element構造はできるが,以下に中川宏さんによる正四面体と立方体によるinterlocked element構造の木工模型の写真を掲げる.一枚板だと力のかかった部分に全体が引っ張られるのに対して,この構造では隣り合う部分からの反発とで干渉して,外枠に押し広げようとする力になったりあるいは力が分散されたりするのであろう.
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