■n次元の立方体と直角三角錐(その3)

 (その2)の最後に「n次元平行多面体の元素の形は?」という予想を示したが,これは昨年書いたコラム「平行多面体に関する新しい定理」ですでに提示していたものである.今回のコラムでは「4次元平行多面体の元素の形は?」を検証してみることにする.

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【1】計量(辺の長さ)

 4次元平行立方体の基本単体の頂点は

  p0(0,0,0,0)

  p1(1,0,0,0)

  p2(1,1,0,0)

  p3(1,1,1,0)

  p4(1,1,1,1)

超平面x1+x2+x3+x4=2との交点は

  (1,1,0,0)

  (1/2,1/2,1/2,1/2)

  (1,1/3,1/3,1/3)

  (2/3,2/3,2/3,0)

  (1,1/2,1/2,0)

である.

 したがって,x1+x2+x3+x4≦2の部分をとると,7頂点

  q0(0,0,0,0)

  q1(1,0,0,0)

  q2(1,1,0,0)

  q3(1/2,1/2,1/2,1/2)

  q4(1,1/3,1/3,1/3)

  q5(2/3,2/3,2/3,0)

  q6(1,1/2,1/2,0)

が元素の頂点となる.q2〜q6は超平面x1+x2+x3+x4=2上にある.辺の長さは

  q0q1=1,q0q2=√2,q0q3=1,q0q4=√(4/3),q0q5=√(4/3),q0q6=√(3/2)

  q1q2=1,q1q3=1,q1q4=√(1/3),q1q5=1,q1q6=√(1/2)

  q2q3=1,q2q4=√(2/3),q2q5=√(2/3),q2q6=√(1/2)

  q3q4=√(1/3),q3q5=√(1/3),q3q6=√(1/2)

  q4q5=2/3,q4q6=√(1/6),q5q6=√(1/6)

 それに対して,x1+x2+x3+x4≧0の部分をとると,7頂点

  q0(1,1,1,1)

  q1(1,1,1,0)

  q2(1,1,0,0)

  q3(1/2,1/2,1/2,1/2)

  q4(1,1/3,1/3,1/3)

  q5(2/3,2/3,2/3,0)

  q6(1,1/2,1/2,0)

が元素の頂点となる.q2〜q5は超平面x1+x2+x3+x4=2上にある.辺の長さは

  q0q1=1,q0q2=√2,q0q3=1,q0q4=√(4/3),q0q5=√(4/3),q0q6=√(3/2)

  q1q2=1,q1q3=1,q1q4=1,q1q5=√(1/3),q1q6=√(1/2)

  q2q3=1,q2q4=√(2/3),q2q5=√(2/3),q2q6=√(1/2)

  q3q4=√(1/3),q3q5=√(1/3),q3q6=√(1/2)

  q4q5=2/3,q4q6=√(1/6),q5q6=√(1/6)

となって辺の長さは変わらず,基本単体の2分割体になっていることがわかる.

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【2】計量(胞数)

  q0(0,0,0,0)

  q1(1,0,0,0)

  q2(1,1,0,0)

  q3(1/2,1/2,1/2,1/2)

  q4(1,1/3,1/3,1/3)

  q5(2/3,2/3,2/3,0)

  q6(1,1/2,1/2,0)

のq2,q3,q4,q5,q6は超平面x1+x2+x3+x4=2上にある.

 超平面x4=0上にはq0,q1,q2,q5の4点が載る.すなわち,q0,q1,q2,q5を囲む胞は超平面x4=0で表される.超平面x1=1上にはq1,q2,q4,q6の4点が載る=q1,q2,q4,q6を囲む胞は超平面x1=1で表される.さらに

q0,q2,q3,q5を囲む胞は超平面x1−x2=0で表される.

q0,q1,q3,q4,q5を囲む胞は超平面x2−x3=0で表される.

q0,q1,q2,q3,q4を囲む胞は超平面x3−x4=0で表される.

 これは四面体3個,四面体錘3個からなるまさしく6胞体であると思われる.早合点(ないし錯覚)がなければよいのであるが,4次元(ないし高次元)の図形は直感がきかず,2次元・3次元からの類推で考えてもなにかと誤りやすいのである.

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【3】雑感

 4次元正多胞体の場合,RP192個で正24胞体,RP24個(384個)で正8胞体を組み立てることができた.

 4次元平行多面体の元素は(実際にそのような充填形は存在すると思われるのだが),これが768個で4次元立方体(正8細胞体)を組み立てることができる.もちろん,384個で4次元切頂八面体(30胞体),1536個で4次元菱形12面体(正24胞体)を組み立てることができるものと思われる.

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【補】超平面

 aを行ベクトル,xを列ベクトルとして

  a=(a1,・・・,an)

  x’=(x1,・・・,xn)

また,実数をcとおくと,n次元ユークリッド空間の超平面は,

  ax’=c

で表すことができます.原点を通るときc=0で,その場合,原点を中心とするn次元超立方体と超平面ax’=0は必ず交わります.

 ベクトルaを超平面の法線ベクトルと呼びます.法線ベクトルはスカラー倍を除いて一意に定まります.aをその長さ‖a‖で割ったベクトルa/‖a‖を考えると,これは長さ1の単位法線ベクトルとなります.

 また,aが単位法線ベクトル,すなわち,

  a1^2+a2^2+・・・+an^2=1

が成り立つとき,cは原点から超平面へ引いた垂線の(符号のついた)長さとなります.

 n=1なら方程式はax=bですから,超平面は点にほかなりません.n=2ならax+by=cとなり,超平面は直線,n=3ならax+by+cz=dですから,超平面は平面を表します.3次元空間内の超平面が普通の平面だし,2次元空間内の超平面は直線ですから,n次元空間の場合,n−1次元の線形多様体を超平面というのです.

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