■ハノイの塔(その5)

 ハノイの塔とは3本の柱A,B,Cがあり,柱Aにある何枚かの円盤を1枚ずつ柱Bを中継点にして柱Cに移動させるものですが,柱が3本のとき→4本のとき→n本のときに一般化するのはもっと難しい問題になります.

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【1】4本ハノイの塔不等式

 3本ハノイの塔の場合,n枚の円盤を移動する手数をTnとすると,等式

  Tn=2Tn-1+1</P>

より

  Tn=2^n−1

を得ることができます.

 ハノイの塔の棒が3本から4本の場合に拡張して,n枚の円盤を移動する手数をWnとすると,

  Wn=3^n−1   (これはWn=3Wn-1+2の解)

になるのではなく,不等式

  Wn(n+1)/2≦2Wn(n-1)/2+Tn

  Wn(n+1)/2≦2^n(n−1)+1

が成り立ちます.

[証]Yn=(Wn(n+1)/2−1)/2^nとおけば,

  Yn≦Yn-1+1

より

  Wn(n+1)/2≦2^n(n−1)+1

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 一般には

  Wm≦2Wm-k+Tk

が成り立ちますが,この不等式はまず頂上のm−k枚を移動し,次に3本の棒だけで底のk枚を移動し,最後に再び頂上のm−k枚を移動することに対応しています.問題の不等式はm=n(n+1)/2の場合に右辺を最小化する唯一のkの値に依存しています.

 k本の棒の場合の最小手数をXkで表します(X3=T,X4=W).このとき,不等式

  Xk((n+1,k))≦2Xk((n,k))+Xk-1((n,k−1))

  Xk((n,k))≦2^n+1-k(n−1,k−1)

が成り立ちます.

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【2】k本ハノイの塔問題

 驚くべきことに,k≧4のときのk本ハノイの塔問題は組み合わせ論的爆発のため,いまだ解明されていません.

 フレイム・スチュワートのアルゴリズムの移動回数M(n,k)は実験的にn=30程度まで調べられており,その範囲では実際に最小となることが確認されています.そのため,FSアルゴリズムが最小解を与えると信じられていますが,厳密な証明はされていないのです.

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