■有限単純群の分類(その4)

 単純群は

  (1)素数位数の巡回群

  (2)5次以上の交代群

  (3)リー型の単純群

  (4)散在型単純群

の4種類に大別される.今日では有限単純群の分類は完成し,合計18の無限系列と26個の散在群に限ることがわかっている.

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【6】ムーンシャイン現象

 次の目標は周期律表に載っていないこれ以外の例外型単純群は存在しないことを証明することであったが,モンスター群が最大の例外型単純群であることがわかったと同時に信じられない驚きが待っていた.有限単純群の分類の完成は,ムーンシャイン予想という予期せぬものを生み出したのである.

 マッカイにより,モンスター群(196883次元)はj関数の級数展開

  j(q)=1/q+744+196884q+21493760q^2+864299970q^3+20245856256q^4+・・・

の1つ違いの係数196884と関係していることがわかった.コンウェイはこの不可解な現象を論理的な理由のわからない,意味のはっきりしないものという趣旨を込めて,モンスターと数論の結びつきをムーンシャインと呼んだ.

 オッグは双曲平面に作用し巻き込んで球面にするモジュラー群に対応する素数は2・3・5・7・11・13・17・19・23・29・21・41・47・59・71だけであることを示した.

 その後,ボーチャーズが現代物理学の弦理論にその原点をもつ頂点作用素代数を用いることによって,これは単なる偶然の一致ではなく,そこに何か真実が隠されていることをつきとめる.これによりモンスター群と数論との明瞭な関係が実証されたことになる.

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[補]ケプラー予想

 3次元空間の球の充填問題は「ケプラー問題」と呼ばれるものですが,この問題は1998年にトマス・ヘールズとファーグソンによって証明されました.これにより「キャノンボール・パッキングよりも密度の高い3次元パッキングは存在しない」ことになります.また,n=24のとき,リーチ格子が唯一最密な球の詰め込みを与えることが証明されています(コーン,クマール:2004年).

[補]kissing number

 n次元ユークリッド空間において,1つの単位球に同時に接触することのできる単位球の最大個数τnの正確な値を決定する問題は大変難しく,4次元以上の高次元については,高度に対称的な格子状配置になっている8次元(240個)と24次元(196560個)の場合を除いて未解決であり,現在,正確な値が知られているのは,

  τ1=2,τ2=6,τ3=12,τ4=24,τ8=240,τ24=196560

の6つだけです.τ4=24であることが証明されたのは2003年,ロシアの数学者ミュージンによってです.

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