■ユークリッドの互除法の測度論(その7)

 ユークリッドの互除法の解析を続ける.除算ステップの最大回数がわかったから,次は平均回数を求めたい.

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[1]近似モデル

 分母がnのときの平均回数を

  Tn=1/n・ΣT(k,n)

とすると,漸化式

  T0=0,

  Tn=1+(T0+T1+・・・+Tn-1)/n

  Tn+1=1+(T0+T1+・・・+Tn)/(n+1)

=1+(n(Tn−1)+Tn)/(n+1)=Tn+1/(n+1)

が成り立つ.

 したがって,Tn=Hnすなわち調和数となるから

  Tn=ln(n)+O(1)

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[2]連続モデル(ガウスの定理)

 1828年,ガウスは整数部を除いた[0:a1,a2,a3,・・・,an]がxより小さい小数となる確率は

 P([0:a1,a2,a3,・・・,an]<x)=log2(1+x)+εn

で与えられることを証明しました.

 誤差項に関して,1928年にクズミンはほとんどすべての連分数に対して,

  εn=O(q^√n)  0<q<1

1929年にレヴィは

  εn=O(q^n)  q=0.7

であることを示しました.どちらも誤差項εnは漸近的に0になることを示しています.

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 ガウスはまた,連分数の部分商の確率密度関数は

  P(an=k)=P(k<εn<k+1)=P(εn<k+1)−P(εn<k)

→log2(1+1/k)−log2(1+1/(k+1))=log2(1+1/k(k+2))

であることを示しました.

 an=1,2,3,・・・に対する確率は大部分の小数部で等しいのと対照的に,連分数では減少していきます.そして,十分大きなnに対する部分商の起こる確率Pは

k        1  2  3  4  5  6  7  8 9+

P(an =k)  .41 .17  .09  .06  .04 .03 .02 .02 .16

となることがわかります.

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 部分商がaになる確率は

  log2(1+1/a)−log2(1+1/(a+1))

=log2((a+1)^2/((a+1)^2−1))

 商が1になる確率はlog2(4/3)=41.504%

 商が2になる確率はlog2(9/8)=16.993%

 商が3になる確率はlog2(16/15)=9.311%

 商が4になる確率はlog2(25/24)=5.889%

 商が1となる確率は41%で,これはベンフォードの法則,最大桁が1になる頻度log102=0.3010よりも高いことになる.

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