■学会にて(京大数理解析研,その38)

ほかにも忘れ去られたスペクトルがある可能性がある。

しかし、λ=(9-4/x^2)^1/2、あるいは一般にλ=(M^2-N^2/x^2)^1/2からxを求めるのは容易ではないだろう。

一番近道であると考えられる方法は、{un}からのひとつとびの2項

x=un,y=un+2またはx=un+2,y=unが2次形式x^2-axy+y^2=bとしてあらわされるための条件を求めることであろう。

漸化式がun+1=Mun+Nun-1となる数列を考えるのであるが、N=1でない場合は分数係数となるため、ここでは

un+1=Mun+un-1, u1=L, u2=N,u3=MN+L

とする。このとき、

x^2-(M^2+2)xy+y^2={M^2(L^2-N^2)+M^3LN}(-1)^n

x=un, y=un+2またはx=un+2,y=un

となる。

具体的に書くと

(x2+y2+1)/xy=3 ←→ x=F2n-1, y=F2n+1

(x2+y2-1)/xy=3 ←→ x=F2n, y=F2n+2

(x2+y2-5)/xy=3 ←→ x=L2n-1, y=L2n+1

(x2+y2+5)/xy=3 ←→ x=L2n, y=L2n+2

(x2+y2+4)/xy=6 ←→ x=P2n-1, y=P2n+1

(x2+y2-4)/xy=6 ←→ x=P2n, y=P2n+2

(x2+y2-32)/xy=6 ←→ x=Q2n-1, y=Q2n+1

(x2+y2+32)/xy=6 ←→ x=Q2n, y=Q2n+2

これらの中で

(x2+y2+1)/xy=3 ←→ x=F2n-1, y=F2n+1

(x2+y2+4)/xy=6 ←→ x=P2n-1, y=P2n+1

はλ=[√5,3]に

(x2+y2-1)/xy=3 ←→ x=F2n, y=F2n+2

(x2+y2-4)/xy=6 ←→ x=P2n, y=P2n+2

はλ=[3,√13]に現れるマルコフ数になっている。

これらは

x2+y2+z2=3xyz ← x=F2n-1, y=F2n+1, z=1

x2+y2+z2=3xyz ← x=P2n-1, y=P2n+1, z=2

x2+y2-z2=3xyz ← x=F2n, y=F2n, z=1

x2+y2-z2=3xyz ← x=P2n, y=P2n, z=2

と書き直すことができるが、このことがマルコフ数となりうる理由である。

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以上より、忘れ去られたスペクトルがあるとすれば{M^2(L^2-N^2)+M^3LN}が平方数□となることが必要である。

N^2-MLN-L^2+□/M^2=0が整数解Nを持つのは

-L^2+□/M^2=0すなわち□=(ML)^2のとき、N=MLとなる

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N^2-MLN+(√□/M+L)(√□/M-L)=0となるが

-L^2+□/M^2>0のとき

(√□/M+L)>0,(√□/M-L)>0

-(√□/M+L)-(√□/M-L)=ML

-2√□/M=MLはあり得ない

-L^2+□/M^2<0のとき

(√□/M+L)>0,(√□/M-L)<0

|√□/M+L|>|√□/M-L|

この場合も

-(√□/M+L)-(√□/M-L)=MLだが、

-2√□/M=MLはあり得ない

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したがって、

x2-(M2+2)xy+y2=M2L2(-1)n

(x2+y2+M2L2)/xy=M2+2 ←→ x=u2n-1, y=u2n+1

(x2+y2-M2L2)/xy=M2+2 ←→ x=u2n, y=u2n+2

となるが、Markov equationに対応させると

x2+y2+z2=(M2+2)xyz/ML ← x=u2n-1, y=u2n+1, z=ML

x2+y2-z2=(M2+2)xyz/ML ← x=u2n, y=u2n+2, z=ML

が得られたことになる。

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ここまでくればあとは簡単である

(M^2+2)/ML=3

とおける。

L=(M^2+2)/3Mは整数であるから

M=3kのとき、L=(9k^2+2)/9k=k+2/9k

M=3k+1のとき、L=(9k^2+6k+3)/(9k+3)=k+(3k+3)/(9k+3)・・・整数となるのはk=0のときのみ、M=1

M=3k+2のとき、L=(9k^2+12k+6)/(9k+6)=k+(6k+6)/(9k+6)・・・整数となるのはk=0のときのみ、M=2

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M=1のとき、L=1,N=1 (Fibonacci)

M=2のとき、L=1,N=2 (Pell)

以外にマルコフ数は存在しないことになる

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