■ケプラーの法則(その2)

 ギリシア時代の天文学では、惑星は地球の周りを等速円運動すると考えられていました。神の創造した世界は完全な調和の世界であり、完全なる図形である円こそが神の世界にふさわしいとされたのです。したがって、当時の常識としては、「幾何学における神聖な作図とは定規とコンパスという基本的な2つの道具だけしか使わないものであって、直線と円の世界から外れるものは不純である。したがって、神秘的であるべきすべての天体の運動は円とその組み合わせによって支配される(周転円説)。」という思想があり、惑星は地球の位置とは少しずれた中心の円の上を運動する(離心円)とか、その円軌道上を小さく円を描きながら動く(周転円)とか工夫して惑星の運動を説明しようとしましたため、非常に複雑なものとなってしまいました。天動説を否定して地動説を唱えたコペルニクスでさえも、太陽を中心に離心円と周転円を組み合わせることで惑星運動の原理を説明しています。

 パラダイムシフト(発想法の転換)が必要であったのですが、ケプラーはこの思想の壁を破って「惑星は楕円軌道を描き、太陽はそのひとつの焦点にある」に到達したのです。答えを知っている私たちから見れば常識のように思っている法則なのですが、それまで支配的であった見方・考え方を克服して確立されたもので、必ず何らかの美しい法則がこの宇宙を支配しているという強烈な思い入れ(狂信?)がケプラーの法則の発見へとつながったわけです。科学思想の背景をふまえながら、ケプラーが法則を発見するに至る道筋を振り返ってみることにしましょう。

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