■行列式の計算(その45)

【1】隣接行列のベキ乗

 この隣接行列を2乗すると

     [1,1,0]

  B^2=[1,1,0]

     [0,0,2]

となるが,このことは何を意味するのだろうか? (1,2)要素は1,(3,3)は2であるが,これは長さ2の道の数に一致している.一般にB^nの(i,j)要素はi←→jの長さnの道の数になっているのである.

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【2】隣接行列の固有値

 位数kのグラフの固有値は隣接行列の固有値,すなわち,固有多項式

  Φ=det(λI−B)=0

の解λで与えられる.冒頭に掲げたグラフの固有多項式は

    | λ, 0,−1|

  Φ=| 0, λ,−1|=λ^3−2λ

    |−1,−1, λ|

で,固有値は0,±√2と計算される.

 グラフに異なるラベルを付けても固有値は同じになる.

  1 2 3

  ・−・−・

のようにラベルしたグラフの隣接行列は

    [0,1,0]

  B=[1,0,1]

    [0,1,0]

となるから

    | λ,−1, 0|

  Φ=|−1, λ,−1|=λ^3−2λ

    | 0,−1, λ|

 固有値λはすべて実数でその和は0となる.

  Σλi=0

また,グラフが連結なとき,最大次数をΔとすると

  |λ|≦Δ

となる.冒頭の例ではΔ=2である.

 また,隣接行列Bの固有値をλ1,・・・,λkとすると,B^nの固有値は

  λ1^n,・・・,λk^n

となる.このことから長さnの道の数は

  tr(B^n)=Σλi^n

であることがわかる.

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