■分割数の近似式(その2)

【2】分割数の近似式

 p(n)を評価する問題は数論において研究されていて,ラマヌジャンが予想した注目すべき漸近近似式

  p(n) 〜 1/4n√(3)exp(π√(2n/3))

は,1918年,ハーディーとラマヌジャンによって,円周法を用いて証明が与えられています.

 実は,円周法に基づく漸近公式の結果を正確に証明するだけでも,長くてこみ入った理論が必要になります.そこで漸近公式の概要だけを簡単に述べますが,σ(k)をkの約数の和とすると,p(n)に対する漸化式

  p(n)=1/nΣσ(k)p(n-k)

において,σ(k)の漸近的振る舞い

  1/n^2Σσ(k)〜π^2/12

を用いると,nが大きい場合の分割数の漸近挙動

  p(n)〜exp(π√(2n/3))/4n√3

を得ることができます.このことから,p(n)は準指数関数と考えることができます(p(n)^(1/n)→1).

  q(n)=1/4n√(3)exp(π√(2n/3))

とおいて最も近い整数を求めてみると,

  q(1)=2,q(2)=3,q(3)=4,q(4)=6,q(5)=9,q(6)=13,

  q(7)=18,q(8)=26,q(9)=35,q(10)=48,q(11)=65,q(12)=87,・・・

となってそれほどよい評価式には思えませんが,漸近近似式はnがどんどん大きくなるとき0に近づくような誤差項を含んだ公式なのです.

 その後,分割関数はラーデマッハーによって修正され,完全な明示公式

  p(n)=1/π√(2)Σk^(1/2)Ak(n)d/dn{sinh(πλn√(2/3))/λn}

  λn=√(n-1/24),Ak(n)には1の24乗根が関係する

が与えられました(1937年).

 分割関数の母関数

  f(x)=Π(1-x^n)^(-1)={(1-x)(1-x^2)・・・(1-x^n)・・・}^(-1)

    =Σp(n)x^n=1+p(1)x+p(2)x^2+p(3)x^3+・・・

は,本質的にモジュラー形式を与えるので,ラーデマッハーはその保型性から明示公式にたどりついたのですが,ハーディーとラマヌジャンはその第一近似式を得たことになります.このことに関して,セルバーグは,ハーディーとラマヌジャンが明示公式までたどりつけなかった原因はハーディーがラマヌジャンを十分に理解できなかったことによると興味深いコメントを述べています.

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