■分割数の近似式(その1)

【7】分割数の近似式

 分割関数p(n)は整数値をとりますが,分割数を表す簡単な公式はありません.しかし,ラマヌジャンが予想した注目すべき近似式が知られています.

  p(n) 〜 1/4n√(3)exp(π√(2n/3))

 無限乗積のままでは扱いにくいので,有限乗積

  fn(x)=Π(1-x^n)^(-1)

を使ってp(n)を評価してみましょう.

[1]上界について

 すべての(0,1)なるxに対して

  p(n)≦fn(x)/x^n=1/x^nΠ(1-x^n)^(-1)

が成り立ちます.この右辺の値がなるべく小さくなるようにxを選びたいのですが,まず対数をとると

  lnp(n)≦-nlnx-Σln(1-x^k)≦-nlnx+x/(1-x)Σ1/k^2

 ここで,

  Σ1/k^2=ζ(2)=π^2/6

ですから

  lnp(n)≦-nlnx+π^2/6x/(1-x)

  u=x/(1-x)  u=0~∞

と変数変換すると

  lnp(n)≦-nln(1+1/u)+π^2/6u

また,不等式1+x≦exp(x)よりln(1-1/u)≦1/uですから,

  lnp(n)<-nln(1+1/u)+π^2/6u≦n/u+π^2/6u

  n/u+π^2/6u

が最小となるのはn/u=π^2/6uすなわちu=√(6n)/πのときで,

  lnp(n)<π√(2/3n)

より,

  p(n)<exp(π√(2/3n))

が成り立つことが証明されます.

 この上界は

  p(n) 〜 1/4n√(3)exp(π√(2n/3))

の指数部分と一致し,かなりよい評価であることがわかります.

[2]下界について

 

 自然数nを順序つきk分割する総数は

  (n-1)C(k-1)=(n-1,k-1)

また,順序のないk分割のそれぞれから高々k!個の順序つきk分割が作れますから,

  p(n)≧(n-1,k-1)/k!≧(n-1)(n-2)・・・(n-k+1)/(k!)^2

が成り立ちます.

 kを1増やせば分母は(k+1)^2倍され,分子は(n-k)倍されるので,最良の下界を与えるためには(k+1)^2≒n-kより

  k≒[√n]

 このとき,

  (n-1)(n-2)・・・(n-k+1)≧(n-k)^(k-1)=n^(k-1)(1-k/n)^(k-1)

k≒[√n]より,k/n≦1/kですから

  (1-k/n)^(k-1)≧(1-1/k)^(k-1)

したがって,

  n^(k-1)(1-k/n)^(k-1)≧n^(k-1)(1-1/k)^(k-1)≧n^k/en

 

 スターリングの公式の漸近評価,

  k!≦ek(k/e)^k

が成り立つので,

  p(n)≧(n/k^2)^kexp(2k-3)/nk^2≧exp(2k-3)/n^2≧exp(2√n)/exp(5)n^2

 

 以上により,

  exp(2√n)/exp(5)n^2≦p(n)≦exp(π√(2/3n))

小生は事前に

  exp(π√(2/3n))/n^2≦p(n)≦exp(π√(2/3n))

のような形を予想していたのですが,ほぼ一致する結果です.

 したがって,十分大きなnに対しては

  exp(c1√n)≦p(n)≦exp(c2√n)

となる評価が得られたことになります.ラマヌジャンの結果より粗いのですが,関数の増加に対するオーダーがわかればそれでよしとしましょう.

[参]マトウシェク・ネシャトリル「離散数学への招待」シュプリンガー・フェアラーク東京

===================================

  p(n)<exp(3√n)

===================================