■ルベーグの舗石定理とミンコフスキーの舗石定理(その9)
【2】オイラーの多面体定理
凸多面体の頂点,辺,面の数をそれぞれv,e,fとすると,
v−e+f=2 (オイラーの多面体定理)
が成り立ちます.
量(v−e+f)はオイラー標数と呼ばれます.オイラー標数は幾何学において重要な概念である位相不変量の草分けであり,オイラーの多面体定理を利用すると,
1)どの面も同数の辺で囲まれている.
2)どの頂点にも同数の辺が集まっている.
という仮定をするだけで,正多角形であるという仮定をまったくせずとも正多面体は5種類しかないことを証明可能になります.
また,オイラーの多面体定理で示される制限から,単一の凸n角形で平面を敷き詰めるものはn≧7では存在しないこと,2次元以上ですべての頂点の次数が6以上となることは不可能であり,必ず次数が5以下の頂点をもつことなどが導き出されます.
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【3】石鹸の泡のトポロジー
オイラーの定理が物理的作用と結びつくと,興味のある幾何学的効果が出現してきます.たとえば,2次元的にランダムに配列した石鹸の泡はいろいろなサイズの泡細胞からなっていますが,表面張力の要請から境界長を極小化しようとしますから,接合角度は120度となります(プラトー問題・最小シュタイナー木問題).このことから,石鹸の泡は各頂点の次数がすべて3である平面図形と考えることができます.
ここで,次数とは頂点に結合する辺の個数のことで,degで表すことにすると,
2e=Σdeg(握手定理)
が成り立ちます.石鹸の泡の場合は
2e=3v (握手定理)
また,平面図形(地図)は1つの面が無限大となって全体が一面に広がってしまった正多面体と解釈することができますから,オイラー標数は1となります.
v−e+f=1
しかし,外部領域を含めるならば,多面体の場合と同様に
v−e+f=2
が成り立つのです.
オイラーの定理と握手定理を応用すると,
v−e+f=1 (オイラーの定理)
2e=3v (握手定理)
したがって,コラム「オイラーの多面体定理をめぐって」の場合と同様の議論
p~=2e/f=6−6/f→6 (f→∞)
でもって,平均的な泡細胞の形は6角形を中心とした分布をなし,6辺以上の泡細胞を6辺以下の泡細胞と相殺させる必要性から6から遠ざかることはほとんどないに違いないということになります.
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