■正多角形の作図と原始根(その248)

 フェルマーの小定理とよばれるものは,

  a^p=a  (modp)

  a^p-1=1  (modp)

すなわち,pを素数とするとaをどんな数にとっても余りが1になるというものである.

 aをランダムに選んでいって,それでも余りが1になればpは素数の候補となるし,1以外の余りがひとつでも出ればpは合成数であることになる.

 とくに

  a^p=a  (modp)

  a^p-1=1  (modp)

の後者はz^n=1という円分方程式(円周等分方程式)との関係も取りざたされるところである.そこで,・・・

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 nを奇素数とする,nで割り切れない任意の数aに対し,

  a,a^2,a^3,・・・,a^n-1  (modn)

を作る.このとき,常に

  a^n-1=1  (modn)

が成立するが,aのベキの次数がn−1に到達する以前に,小さな次数kに対して 

  a^k=1  (modn)

が成立することがある.

 逆に,n−1で初めて

  a^n-1=1  (modn)

が起こることもあり,そのような数aを法nに関する原始根とよぶ.すなわち,原始根の周期はn−1といえるのである.

 例として,n=19,a=2の場合を調べてみると

  2^1=2,2^2=4,2^3=8,2^4=16,2^5=13,2^6=7

  2^7=14,2^8=9,2^9=18,2^10=17,2^11=15,

  2^12=11,2^13=3,2^14=6,2^15=12,2^16=5,

  2^17=10,2^18=1

→2は法19に関する原始根である.

 n=19,a=3の場合を調べてみると

  3^1=3,3^2=9,3^3=8,3^4=5,3^5=15,3^6=7

  3^7=2,3^8=6,3^9=18,3^10=16,3^11=10,

  3^12=11,3^13=14,3^14=4,3^15=12,3^16=17

  3^17=13,3^18=1

→3は法19に関する原始根である.

 n=19,a=4の場合を調べてみると

  4^1=4,4^2=16,4^3=7,4^4=9,4^5=17,4^6=11

  4^7=6,4^8=5,4^9=1

→4は法19に関する原始根ではない.

 n=19,a=5の場合を調べてみると

  5^1=5,5^2=6,5^3=11,5^4=17,5^5=9,5^6=7

  5^7=16,5^8=4,5^9=1

→5は法19に関する原始根ではない.

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 どのような奇素数nに対しても法nに関する原始根は存在する(ガウス).さらに,ガウスは円分方程式:z^19=1の1の19乗根

  z=cos(2π/19)+isin(2π/19)

の解法がn=19に対してn−1=3・3・2と素因数分解されることから,次数19の円分方程式が2つの3次方程式とひとつの2次方程式の解法に帰着することを示している.詳細は

  [参]高瀬正仁「アーベル・不可能の証明へ」現代数学社

を参照されたい.

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p=19の場合、

  2^1=2,2^2=4,2^3=8,2^4=16,2^5=13,2^6=7

  2^7=14,2^8=9,2^9=18,2^10=17,2^11=15,

  2^12=11,2^13=3,2^14=6,2^15=12,2^16=5,

  2^17=10,2^18=1

y1=a^2+a^16+a^14+a^17+a^3+a^5=P'

y2=a^4+a^13+a^9+a^15+a^6+a^10=P"

y3=a^8+a^7+a^18+a^11+a^12+a^1=P

P^2=2P+P'+2P"+6

P^3+P^2-6P+7=0

y1,y2もまたこの3次方程式P^3+P^2-6P+7=0を満たす

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z1=a^2+a^17

z2=a^4+a^15

z3=a^8+a^11=Q'

z4=a^16+a^3

z5=a^13+a^6

z6=a^7+a^12=Q"

z7=a^14+a^5

z8=a^9+a^11

z9=a^18+a^1=Q

QQ'+Q'Q"+Q"Q=-P'-1

QQ'Q"=P'+2

Q,Q',Q"は

x^3-Px^2-(P'+1)x-(P'+2)=0を満たす。

Qは

x^2-Qx+1=0を満たす。

こうしてガウスは次数19の円分方程式が2つの3次方程式とひとつの2次方程式の解法に帰着することを示したのである。

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