■ガウス整数(その5)
【1】ガウス整数
a,bを整数として
a+bi
で表される複素数が「ガウスの整数」です.ガウスの整数は和と積の演算に関して閉じています→「ガウスの整数環」.
また,すべてのガウス整数を約す整数が「単数」で,1の4乗根である
±1,±i
の4個の単数があります.ガウス整数は正方形の対称性をもつ正方格子をなします.
素数は複素数体でも定義されますが,ガウス素数とはそのノルムが通常の素数であるようなガウス整数のことです.数論の教えるところによると,複素数体においても,単数を除いて,素因数分解の一意性が成立します.
4k+3型素数はやはりガウス素数ですが,2および4k+1型素数はガウス素数の積に分解されるのです.
2=(1+i)(1−i)=i(1−i)^2
5=(1+2i)(1−2i)
29=(5+2i)(5−2i)
ガウス素数を列挙すると
1±i,3,2±i,7,11,3±2i,4±i,19,23,5±2i,31,・・・
となりますが,
1±i,2±i,3±2i,4±i,5±2i
はそれぞれ2,5,13,17,29,・・・すなわち,2および4k+1型素数に対応するガウス素数ということになります.
また,a+biがガウス素数ならばその共役a−biやそれに単数±1,±iを掛けたb±aiなど計8通りもガウス素数ですが,単数の違いを除いて,その表し方は本質的に1通りというわけです.
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【2】ガウスの素因数分解
[1]たとえば,5+iでは
(5+i)(5−i)=5^2+1=26=2・13
2→1±i,13→3±2i
です.複素数の掛け算は偏角の足し算に対応しますから,偏角を幾何学的に考慮することによって
5+i=(1+i)(3−2i)
と素因数分解することができます.
[2]70+iでは
(70+i)(70−i)=70^2+1=4901=13^2・29
13→3±2i,29→5±2i
ですから
70+i=i(3−2i)^2(5−2i)
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