■デカルトの三線・四線問題(その2)

【2】カッツ著「数学の歴史」

 私はこの本を阪本ひろむ氏から借りて読んだが,阪本氏の書評によると

(1) エジプト,バビロニアなどの算術に対し,非常に詳しく説明されている.他の時代も同様.他の数学史の説明で理解出来なかった事が理解できた.ネイピアの対数の発見などもわかりやすい.

(2) 練習問題がたくさんある.各時代の算法で問題を解かなければならない.

(3) 切手の図版が多い.おそらくフィラテリストであろう.

(4) 従来の数学史は,ギリシア以降,西洋を中心に書かれているが,本書はヨーロッパ以外の数学に多くを解説している.

 阪本氏のいう通り「数学の歴史」には非常におもしろいことはいろいろ書かれてある.たとえば,トリチェリのラッパのパラドックス「曲線y=1/xのx≧1の部分をx軸のまわりで回転させて得られるのがトリチェリのラッパである.無限に長いラッパの表面積は無限大であるが,体積は有限となる逆説的な立体である.

  V=π∫(1,∞)(1/x)^2dx=π[−1/x](1,∞)=π

  S=∫(1,∞)1/x(1+1/x^4)^1/2dx>∫(1,∞)1/xdx=[logx](1,∞)=∞

であるが,ラッパ形でなく塔形にすると調和級数に帰着され,複雑な積分計算を回避することができる.

  V=π∫(1,∞)(1/x)^2dx<πΣ1/n^2=π^3/6

  S=∫(1,∞)1/x(1+1/x^4)^1/2dx>2πΣ1/n=∞」

 数学史の本には珍しく練習問題があり,練習問題の存在自体も面白いと思う.それぞれの章に練習問題があるが,たとえば,バビロニアの数学を読んだ後,練習問題を解くときには60進法で計算しなければならない.問題は,果たして全てを読み通せるかどうかわからないほどエライ本(大部)であるということであろう.

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