■ラマヌジャンのτとΔ(その93)
[補]互いに素な整数a,bに対する平方の和a^2+b^2は3で割れない.
a=3k → a^2=9k^2
a=3k+1 → a^2=9k^2+6k+1
a=3k+2 → a^2=9k^2+12k+4
より,a^2を3で割ったときの余りは0か1になります.0になるのはaが3の倍数のときです.
b^2に対しても同じことが成り立ちますから,a^2+b^2を3で割ると,余りは0+0,0+1,1+0,1+1にしかなりません.0+0はaもbも3の倍数であることに対応していて,仮定に反します.さらにまた,別の例を挙げてみましょう.
[補]4n+3の数はa^2+b^2の形にならない.
a=4k → a^2=0 (mod 4)
a=4k+1 → a^2=1 (mod 4)
a=4k+2 → a^2=0 (mod 4)
a=4k+3 → a^2=1 (mod 4)
したがって,a^2+b^2を4で割ったときの余りは0+0,0+1,1+0,1+1にしかならないので,この主張が示されました.
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[補]p進数体Qp
ところで,「互いに素な整数a,bに対する平方の和a^2+b^2は3で割れない.」はx^2+y^2=3が3進数体Q3上で解をもたないことを証明したことにほかなりません.
素数pをあらかじめ決めておいて,aを素因数分解します.pのベキ乗部分を分離して,
a=p^n・b/c
とするとき,
|a|p=p^(-n)
という式によって,aの新しい絶対値を決めます.例えば,p=3としておくと
|18|3=|2・3^2|3=3^(-2),|19|3=1,
|13/18|3=|3^(-2)・13/2|3=3^2
などとなります.
以上で定義した素数pごとに定まる絶対値をp進付値といいます.p進付値は普通と違って,p^nはnが大きくなるとゼロに近づきます.すなわち,p進数的に小さいとは,それが高いベキで割り切れるということです.
p進数は19世紀にヘンゼルによって導入された非アルキメデス的数体系で,有理数体Qを||pで完備化して得られます.p進数の集合は
Qp={a-np^(-n)+・・・+a0+a1p+a2p^2+・・・+anp^n}
0≦ai≦p−1
と書けるのですが,これらの数の中で四則演算ができますから,体をなすというわけです.
[補]ハッセの原理(局所−大域原理)
有理数について成り立つことと,実数およびp進数について成り立つことが同値の場合,ハッセの原理が成り立つといいます.ハッセ原理(局所−大域原理)とは,すなわち,局所(p進数)を全部集めれば全体(有理数)のことがわかるという原理です.
2次曲線(種数0)に関してはハッセの原理が成り立ちますから,次の2つの主張は同値です.
(1)ax^2+by^2=1を満たす有理数の組(x,y)が存在する.
(2)ax^2+by^2=1を満たす実数の組(x,y)が存在し,各素数についても,ax^2+by^2=1を満たすp進数の組(x,y)が存在する.
例:2x^2+3y^3=1を満たすような有理数の組は存在するか?
実数は存在します.たとえば,(x,y)=(0,1/√3).しかし,このような3進数(x,y)は存在しません.2n^2−1が3で割れるような整数が存在しないからです.したがって,有理数は3進数の1部でもありますから,このような有理数の組も存在しないということになります.
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