■ラマヌジャンのτとΔ(その89)
1954年のアイヒラーによる例は、それ以前にヘッケが与えた虚数乗法をもつ特殊な楕円曲線ではない、初めての特殊でない例であった。
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有限体上の楕円曲線
y^2+y=x^3−x^2 (modp)
の解を探すことにする.
Np=p-ap,ap=a-Np
p=5の場合,(x,y)=(0,0),(0,4),(1,0),(1,4)の4つある.一般に,解の個数はおおよそp個であることが知られていた.
p=2、Np=4,ap=-2
p=3、Np=4,ap=-1
p=5、Np=4,ap=1
p=7、Np=94,ap=-2
p=5の場合,(x,y)=(0,0),(0,4),(1,0),(1,4)の4つある.一般に,解の個数はおおよそp個であることが知られていた.
実際の個数が
p−ap
に等しいとすると,p=5の場合,4=5−a5であるから,a5=1となる.
pが小さいうちは簡単に計算できたが,pが大きくなるにつれてどんどん複雑になる.apを求める方法はあるのだろうか? 実は,すべてのapを生成する方法があることが知られている.
上とは別に次のような無限積を考える。
1954年にドイツの数学者アイヒラーが発見した生成規則は,
q(1−q)^2(1−q^11)^2(1−q^2)^2(1−q^22)^2(1−q^3)^2(1−q^33)^2(1−q^4)^2(1−q^44)^2・・・
=qΠ(1−q^a)^2(1−q^11a)^2
である.
これを展開すると
q−2q^2−q^3+2q^4+q^5+2q^6−2q^7−2q^9−2q^10+q^11−2q^12+4q^14+・・・
この形式的展開はq=exp(2πiz)とおくと重さ2の保型形式のフーリエ展開となる。
係数bmはランダムにみえるが,実はap=bpが成り立っていて,
a5=b5=1
を生成できるのである.11以外のすべての素数に対してq^pの係数bpがapと一致することが示されたのである。
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また,有限体上の任意の楕円曲線に対して
ap=bp
であるようなモジュラー形式が存在するというのが,谷山・志村・ヴェイユ予想である.
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