■メビウス関数とディリクレ級数(その16)

約数の和関数をσ(n)、オイラーのトーシェント関数をφ(n)とするとき、

ζ(s)ζ(s-1)=Σσ(n)/n^s

ζ(s-1)/ζ(s)=Σφ(n)/n^s

が成り立つ。

また、約数の和関数σ(n)について

σ(n)<exp(γ)nlnlnnがn>5040のすべてのnについて成り立つこととリーマン予想が真であることは同値である。

これらのことから、σ(n)、φ(n)のおおまかな上界と下界を求めることは意味があることであると考えられる。

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[1]コッホの同値条件(1901年)

 リーマン予想=「nとn+k√nの間に素数はある」ですが,

  π(x)=Li(x)+O(x^1/2logx)

  |π(x)−Li(x)|≦C・x^1/2logx

  Li(x)=∫(2,x)dt/logt

 もう少し精緻化すると,2657以上のすべてのxについて,

  |π(x)−Li(x)|≦C・x^1/2logx

  C=1/8π

が成り立つことと論理的に同等です.

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[2]ラガリアスの同値条件(2002年)

 nの約数の和をσ(n)で表すと,リーマン予想は

  σ(n)≦Hn+logHnexpHn

がn≧1に対して成立すると等価です.

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[3]ロバンの同値条件(1984年)

 オイラーの定数γを用いると,リーマン予想は

  σ(n)<expγnloglogn

がn>5040に対して成立すると等価です.

 [2][3]は初等的な条件になっていて,さらに

  Am=B(m+1)Hm/(m+1)-ζ’(-m)

にも調和級数のn次部分和

  Hn =1/1+1/2+1/3+1/4+・・・+1/n

が関わっているのを見ると,リーマン予想との関係が想起されます.

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 素数定理より,素数pとその次の素数との間隔は,平均してlogpですが,リーマン予想が真であれば,素数pとその次の素数との間隔は,ある定数Cを用いて

  C√p・logp

以下であることが,1936年,クラメールにより証明されています.

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