■ケプラーの球体充填問題(その2)

最密充填は正方形を基礎とする配置と六角形を基礎とする配置から作れます.3個のミカンに対して1つの窪みができるのですが,その窪みにミカンを置いたものが六方最密充填です.一方,4個のミカンに対して1つの窪みができ,その窪みにミカンを置くと面心立方充填になります.正方配置の窪みは六方配置の場合よりも深いので,この2つの配置は充填密度に関してはまったく同じなのです.

 この積み方は八百屋の店先でミカンなどの山を安定に積み上げるために使われている日常的な配置ですが,別の角度からみると,上の層の置き方に

  (1)第1,2,3層目がすべてずれていて,第1層目の球の真上に第4層目の球がくる(ABCABCABC・・・)

  (2)第1層目の球の真上に第3層目の球がくる(ABABAB・・・)

という2種類があります.

 (1)は立方体の8個の頂点と6面の中心に球が配置されているところから面心立方格子と呼ばれている配置,(2)は六方最密充填ですが,いずれの場合の充填率も√2π/6(74.04%)になります.以上の2つ以外にも無数の配列が考えられ,たとえば,ABACの4層周期,ABCACBの6層周期などの積み重なりなどが見つけだされています.

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 ロジャースは「ケプラー予想が正しいことは多くの数学者が信じ,すべての物理学者が知っている」という名文句でも有名ですが,1958年,彼は四面体配置から空間充填率の上限を3√2(arccos1/3−π/3)=77.96%とはじき出しました.四面体配置は,3次元で相互に接するように球を配置するときの最大数となる配置ですが,全空間を充たすことはできないので,空間充填率の上限と考えられるわけです.

 ちなみに正十二面配置では75.46%,正八面体では72.09%となるのですが,これらの正多面体も大域的な空間充填はできないのです.1988年には,この上限はわずかに改良され,77.84%よりも高密度の詰め込みは存在しないことが証明されています(ムーダー).これを74.04%まで引き下げることができれば,面心立方格子が最密充填構造だという証明になるのですが,残念ながら,上限の引き下げは骨の折れる厄介なプロセスであり,遅々として進みませんでした.

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