■球面上の幾何学(その47)
【2】エルデシュの不等式
三角不等式(R≧2r)は,より一般的には「△ABC内の任意の点Pから,各頂点までの距離をR1,R2,R3,各辺(またはその延長)までの距離をr1,r2,r3とすれば,
R1+R2+R3≧2(r1+r2+r3)
等号は△ABCが正三角形で,Pがその重心であるとき」
で与えられます.
これが「エルデシュ・モーデルの定理」で,この定理はR≧2rの一般化であると考えられます.エルデシュの定理は,簡単に
A(R)≧2A(r)
と書けますが,Aは算術平均の略で,Rの算術平均≧2(rの算術平均)という意味です.
エルデシュの定理は,算術平均Aを調和平均H,幾何平均Gに置き換えても成り立ちます.すなわち,
R1R2R3≧8r1r2r3
1/r1+1/r2+1/r3≧2(1/R1+1/R2+1/R3)
また,2次の基本対称式に対しては
R1R2+R2R3+R3R1≧4(r1r2+r2r3+r3r1)
も知られています.この種の不等式は美しい.しかし,証明は難しい・・・.
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次に,三角形の代わりに4面体を用います.4面体のある内点から各面までの距離r1,・・・,r4,各頂点までの距離をR1,・・・,R4で表すことにします.
一般に,三角形の重心の性質は四面体に遺伝するので,
R1+R2+R3+R4≧3(r1+r2+r3+r4)
となるはずですが,ところが,これが成立しないのです.
4面体では
R1+R2+R3+R4≧√8(r1+r2+r3+r4)
R1R2R3R4≧81r1r2r3r4
であることが示されています.
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