■球面上の幾何学(その45)
等式の世界も面白いが,不等式の世界だって奥深いものがある.
鋭角三角形ならば,算術平均≧幾何平均より
tanα+tanβ+tanγ≧33√tanαtanβtanγ
前項より,
tanαtanβtanγ≧33√tanαtanβtanγ
したがって,
tanαtanβtanγ≧√27=3√3
であるから,
tanα+tanβ+tanγ≧3√3 (等号は正三角形のとき)
を容易に証明することができる.
少し気分を変えて,次の不等式はどうだろうか?
(問題)
sinαsinβsinγ≦3√3/8
(証明)
2sinβsinγ=cos(β−γ)−cos(β+γ)
=cos(β−γ)+cosα
sinαsinβsinγ
=1/2sinα(cos(β−γ)+cosα)
≦1/2sinα(1+cosα)
これより極大値を計算すると,3√3/8が得られる.なお,この不等式は三角形の外接円,内接円および面積をR,r,△とすれば,
abc=4R△,(a+b+c)r=2△
また,正弦法則
a/sinα=b/sinβ=c/sinγ=2R
より,
abc≦3√3R^3
と同値である.
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相加平均・相乗平均不等式より,
4sinA/2・sinB/2・sinC/2
≦4(sinA/2+sinB/2+sinC/2)^3/3^3
≦4/27・(sinA/2+sinB/2+sinC/2)^3
また
sinA/2+sinB/2+sinC/2≦3(sin((A/2+B/2+C/2)/3)=3sinπ/6=3/2
したがって,
r/R=4sinA/2・sinB/2・sinC/2≦1/2
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