■球面上の幾何学(その29)
われわれが最も慣れ親しんでいる世界地図は,メルカトールの地図と呼ばれるものである.メルカトールの地図は等角写像,すなわち,任意の点から任意の他の点までの正しい方向(方位角)を示す地図であって,海図として航海のナビゲーション用に広く使用されている.
船が羅針盤を頼りに経線・緯線となす角を一定にとって進むことにする.メルカトール図法ならは経線・緯線は平行な縦横の線として表されているので航路は直線になる.しかし,メルカトールの地図は正距図法ではないので,地図上の任意の2つの点を結ぶ線分(航程線)は測地線ではない.
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このような航路が描く線を航海術の用語で航程線というが,これを球面上で見れば渦巻き線となる.オランダの版画家エッシャーは数学を深く理解していた画家で,これとよく似た木版画「球面らせん」という作品を製作している.
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