■球面上の幾何学(その19)

 等式の世界も面白いが,不等式の世界だって奥深いものがある.

 鋭角三角形ならば,算術平均≧幾何平均より

  tanα+tanβ+tanγ≧33√tanαtanβtanγ

前項より,

  tanαtanβtanγ≧33√tanαtanβtanγ

したがって,

  tanαtanβtanγ≧√27=3√3

であるから,

  tanα+tanβ+tanγ≧3√3   (等号は正三角形のとき)

を容易に証明することができる.

 少し気分を変えて,次の不等式はどうだろうか?

(問題)

  sinαsinβsinγ≦3√3/8

(証明)

  2sinβsinγ=cos(β−γ)−cos(β+γ)

           =cos(β−γ)+cosα

  sinαsinβsinγ

 =1/2sinα(cos(β−γ)+cosα)

 ≦1/2sinα(1+cosα)

 これより極大値を計算すると,3√3/8が得られる.なお,この不等式は三角形の外接円,内接円および面積をR,r,△とすれば,

  abc=4R△,(a+b+c)r=2△

また,正弦法則

  a/sinα=b/sinβ=c/sinγ=2R

より,

  abc≦3√3R^3

と同値である.

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 相加平均・相乗平均不等式より,

4sinA/2・sinB/2・sinC/2

≦4(sinA/2+sinB/2+sinC/2)^3/3^3

≦4/27・(sinA/2+sinB/2+sinC/2)^3

 また

sinA/2+sinB/2+sinC/2≦3(sin((A/2+B/2+C/2)/3)=3sinπ/6=3/2

 したがって,

r/R=4sinA/2・sinB/2・sinC/2≦1/2

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