■ミンコフスキー和(その16)
ロボット工学の分野においてはロボットアームの設計や制御,障害物回避問題などが一つの重要な研究対象になっているのだが,障害物回避動作を最適に制御するためには図形のミンコフスキー和をコントロールしなければならない.
ミンコフスキー和A+Bは図形Aを構成する点の位置ベクトルと図形Bを構成する点の位置ベクトルの和全体がなす図形であり,一方の図形の原点がもう一方の図形の境界上を一周するように平行移動させたときにできる和集合である.(いろいろな使い道があるものだと感心したのだが)ロボットの原点が踏み込んではならない領域を表すのに応用することができる.
[1]単位線分とそれに直交する単位線分のミンコフスキー和は単位正方形である。
[2]単位円と単位円のミンコフスキー和は半径2の円である。
[3]日本の国土をA,半径rの円板をBとして,陸地の各点にこの円板を貼り付けることによって定まる領域がA+Bである.すなわち,陸地からの距離がr以下の海の部分を陸地に加えた領域がミンコフスキー和A+Bである.
===================================
【1】ブルン・ミンコフスキーの不等式
一般のn次元図形に対しても不等式
|A+B|^1/n≧|A|^1/n+|B|^1/n
が成立する(平面図形の場合はn=2).等号成立はAとBは相似の位置にあるか,またはAはBの平行移動であるときである.
===================================
[1]単位線分(2次元体積0)とそれに直交する単位線分(2次元体積0)のミンコフスキー和は単位正方形(2次元体積1)である。
|1|^1/2≧|0|^1/2+|0|^1/2
[2]単位円(2次元体積π)と単位円(2次元体積π)のミンコフスキー和は半径2の円(2次元体積4π)である。
|4π|^1/2≧|π|^1/2+|π|^1/2
===================================
[3]単位正方形(2次元体積1)と単位円(2次元体積π)のミンコフスキー和は(2次元体積1+π+4)である。
|5+π|^1/2≧|1|^1/2+|π|^1/2
===================================