■ミンコフスキー和(その3)

 今回のコラムで紹介するドローネー(Delaunay)はロシア人だが,論文をすべてフランス語で発表したので,フランス人と誤解される場合が多い.これは彼の先祖がナポレオンとともにロシアに行きそこに留まったことによる.

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【1】フェドロフの平行多面体とミンコフスキーの定理

 フェドロフは平行多面体には立方体,6角柱,菱形12面体,長菱形12面体,切頂8面体の5種類しかないことを証明した.さらに,ミンコフスキーはn次元ユークリッド空間で格子タイリングできる凸多面体は最大2(2^n−1)個の(n−1)次元面をもつことを証明した.

 長い間,2(2^n−1)がn次元空間充填多面体の面数の上限であると信じられてきた.すなわち,3次元空間充填多面体の面数の上限は14面であり,14面以上の面をもつことは不可能であると・・・.しかし,平行移動のほかに回転や鏡映操作も許せば,さらに多くの多面体が空間充填可能となる.

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【2】ドローネーの定理

 ドローネーはミンコフスキーの定理を一般化し,最大

  f=2^n(1+t)−2

個の面をもつことを示した.tは互いに平行移動で重なる分割におけるクラスの最小数である.

 n=3に対しては互いに平行移動で重なる分割におけるクラスの最大数はt=48,したがって,空間充填多面体の面の数はf≦390を意味するが,この見積もりは明らかに大きすぎると思われる.

 エンゲルは38面をもつタイルをいくつか作ったが,

  2^3(1+4)−2=38

であるからt≧4を意味している.ちなみに現在は4≦f≦38であるすべてのfに対し,空間充填可能な凸f面体が存在することが判明している.

 たとえば,t=5ならばf=46となるが,

[Q1]38より大きい面数のタイルは存在するだろうか?

[Q2]面数に上限はあるだろうか?

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【3】おまけ

 ドローネーの名を冠する数学用語としては,ドローネー分割があげられる.ボロノイ分割の双対がドローネー分割で,2次元ドローネー分割は三角形分割,3次元ドローネー分割は四面体分割になる.また,平均曲率一定の回転面は「ドローネー曲面」と呼ばれている.

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 日本の国土をA,半径rの円板をBとして,陸地の各点にこの円板を貼り付けることによって定まる領域がA+Bである.すなわち,陸地からの距離がr以下の海の部分を陸地に加えた領域がミンコフスキー和A+Bである.今回のコラムでは,A,B,A+Bの3つの面積の関係を述べたブルン・ミンコフスキーの不等式を紹介する.

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【1】ブルン・ミンコフスキーの不等式

 冒頭では平面での場合を述べたが,一般のn次元図形に対しても不等式

  |A+B|^1/n≧|A|^1/n+|B|^1/n

が成立する(平面図形の場合はn=2).等号成立はAとBは相似の位置にあるか,またはAはBの平行移動であるときである.

1887年にブルンがn=3の場合を示した。世紀の変わり目にミンコフスキーがすべてのnに対して示した。凸タイの幾何学の根幹をなしている

 また,2つの凸図形K0,K1が与えられたとき,K0からK1への連続変形

  Kt=(1−t)K0+tK1   (0≦t≦1)

においては

  |Kt|^1/n≧(1−t)|K0|^1/n+t|K1|^1/n

が成り立つ.

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